自家消費型太陽光発電は、近年注目を集めるエコフレンドリーなエネルギー解決策です。企業や個人が発電した電力を自ら消費し、電気代を削減するだけでなく、CO2排出の削減にも貢献します。本記事では、自家消費型太陽光発電の基本からメリット・デメリット、導入の背景と方法、さらには税制優遇や補助金制度について詳しく解説します。導入を検討している方にとって、有益な情報を提供します。
1. 自家消費型太陽光発電の基本
自家消費型太陽光発電とは、太陽光パネルを使って得た電力を施設や家庭で使うことを指します。昼間は太陽光発電による電力を使い、夜間は蓄電池に保存した電力を使うことが多いため、電力会社からの電力購入を減らしエネルギーコストを抑えることができます。
さらに、自家消費型発電システムは、持続可能なエネルギー供給の一環として位置づけられています。二酸化炭素排出を削減できるため、再生可能エネルギーの普及が求められる現在、非常に有効な選択肢と言えます。
1.1. 太陽光発電の売電型と自家消費型の違い
売電型とは、太陽光パネルで発電した電気を電力会社に売却する仕組みで、固定価格買取制度(FIT)に基づいて運用されています。固定価格買取制度(FIT)は、再生可能エネルギーの普及促進を目的として2012年7月に日本で導入された制度で、主な特徴は以下の通りです。
固定価格での買取:再生可能エネルギーで発電された電力を、一定期間、固定価格で買い取ります。
買取期間:例えば、2024年度に導入される10kW以下の太陽光発電システムの場合、10年間の買取が保証されます。
買取価格:毎年、経済産業大臣が決定します。2024年度の10kW以下の太陽光発電システムの場合、1kWhあたり16円です。
再エネ賦課金:買取費用の一部は、電気利用者から「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として徴収されます。
FIT制度の導入により、2011年度に10.4%だった再エネ電源構成比は、2021年度には20.3%まで上昇しています。
出典:
【図解】FIT(固定価格買取制度)とは? 太陽光発電の売電の仕組みを解説 – EV DAYS | 東京電力エナジーパートナー
FIT(固定価格買取制度)とは? メリットや仕組みを解説 | 東京ガス
一方、自家消費型とは、太陽光パネルで発電した電気を電力会社に売らずに、施設や家庭で消費する仕組みです。この方式には以下の2種類があります。
全量自家消費型
太陽光発電で生成されたすべての電気を自社や自宅で消費する仕組みです。この方式では、電力を外部に売ることなく、すべてを自社や自宅で活用することができます。
・発電した電力を100%自家消費
・電力会社への売電は行わない
・事業者の場合は、オフィスの照明、冷暖房、工場の生産設備などに使用
・個人の場合は、照明、冷暖房、家電、エコキュート、電気自動車の充電などに使用
余剰売電型
発電した電気を自家消費しながら、余った分を電力会社に売電する仕組みです。
・自家消費を優先
・使い切れなかった余剰電力を電力会社に売電
・固定価格買取制度(FIT)による一定期間の固定価格での売電が可能
・対象は、10kW未満の住宅用と、10kW以上50kW未満の産業用
出典:
自家消費型の太陽光発電とは?仕組みや導入メリット、注意点 | 京セラ
全量売電と余剰売電の違いは?対象条件や売電収入を増やす方法を解説! | 株式会社グッド・エナジー
1.2. 導入の背景と必要性
自家消費型太陽光発電の導入は、主にエネルギーコスト削減と環境保護の観点から進められています。エネルギー価格の上昇や、再生可能エネルギーの需要拡大が、その背景にあります。さらに、地球温暖化対策としても重要な役割を果たしています。
また、エネルギー自給率の向上も期待されています。日本はエネルギー自給率が低いため、自らがエネルギーを生産することはエネルギーセキュリティの観点からも重要です。自家消費型太陽光発電を導入することで、外部環境に左右されない安定したエネルギー供給が実現します。
さらに、技術の進化により、発電効率やコストも改善されています。これにより、初期投資の負担が軽減され、導入ハードルが低くなっています。政府や地方自治体による補助金や税制優遇も後押しになり、こうした背景から自家消費型太陽光発電の導入は今後ますます必要性が高まるでしょう。
なお、太陽光発電を理解するためには、発電の仕組みについて知っておくことが重要です。詳しくはこちらの 発電の仕組みとは?知っておきたい基本知識 をご確認ください。
2. 自家消費型太陽光発電のメリット
自家消費型太陽光発電には、多くのメリットがあります。
2.1. 電気代の削減
自家消費型太陽光発電を導入することで、電気代を大幅に削減することができます。太陽光パネルで発電した電力を施設や家庭で直接消費するため、電力会社から購入する電力の量を減らすことができます。この仕組みによって、毎月の電気代が少なくなり、長期的にはかなりのコストダウンが期待できます。
また、余った電力は蓄電池に貯めておくことができ、必要な時に使用できるため、電力の管理がしやすくなります。さらに、電力料金の変動による影響を少なくすることができ、安定した経済的効果が得られます。
2.2. CO2排出量の削減による環境保全への貢献
太陽光発電は、CO2の排出量を大幅に削減することができるため、環境保全に大きく貢献します。化石燃料を使用しないため、発電時に有害なガスが発生しません。そのため、地球温暖化の原因となるCO2の排出量を減らすことができます。さらに、自然光を利用するため、持続可能なエネルギーとしての価値も高いです。
特に企業がこの技術を導入することで、環境への配慮が評価され、企業価値の向上につながります。ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが重視される中、自家消費型太陽光発電は企業の社会的責任を果たす手段となります。
2.3. 非常用電源としての導入価値
太陽光パネルと蓄電池の併用で、停電時にも必要な電力を確保することができます。電力供給が途絶えることなく安心して生活を続けられるため、災害時のストレスを軽減し、心身の安定を保つ役割を果たします。停電時だけでなく、計画停電や電力供給不足の際にも、非常用電源としての活用価値が高いです。
企業としても、自社で発電した電力を使用できるため、業務の継続性が確保されます。特に蓄電池と組み合わせることで、夜間や悪天候時でも一定量の電力供給が可能となり、BCP(事業継続計画)対策としても有効です。
なお、太陽光発電の導入には安全で効率的な電気設備の設置が不可欠です。特にキュービクルは、太陽光発電システム、特に高圧システムにおいて、電圧変換、安全性確保、系統連系など多岐にわたる重要な役割を担っています。キュービクルの設置基準については、こちらの キュービクル設置基準のポイント!安全かつ効果的な方法 をご確認ください。
3. 自家消費型太陽光発電のデメリット
自家消費型太陽光発電は、再生可能エネルギーへの転換として注目されていますが、デメリットも存在します。
3.1. 設置スペースの確保
太陽光発電を導入する場合、まず考慮すべきは設置スペースの確保です。太陽光パネルには広い面積が必要で、パネルを効果的に配置するために、日陰にならない場所を選ばなければなりません。住宅地では、適切なスペースを見つけることが難しいことも多くあります。
また、太陽光パネルの傾斜も設置条件に影響を与えます。これらの要素が揃わないと、効率の良い発電が難しくなるからです。設置スペースが足りない場合は、地上にパネルを設置する方法もありますが、その際は更なる土地購入や整地が必要となります。
3.2. 初期設置費用の高さ
太陽光発電を導入する際の初期設置費用は、高額であることが一般的です。
まず、太陽光パネル自体の価格が高く、その上でインバーターや設置工事の費用も加わります。インバーターとは、太陽光パネルが生成する直流(DC)電力を、家庭で使用できる交流(AC)電力に変換するシステムのことで、これにより太陽光で発電した電気を家電製品で利用することが可能になります。
さらに企業の場合は、太陽光発電の規模が大きくなればそれだけ費用も増加します。投資回収期間が長くなるため、初期投資の回収に時間がかかる点もデメリットといえるでしょう。そのため、税制優遇や補助金を上手に活用することが大切です。後述しますので是非ご確認ください。
3.3. 発電量と天候の関係
太陽光発電は、天候に強く影響されるエネルギー源です。晴天の日には効率よく電力を生成できますが、曇りや雨天の日には発電量が大幅に減少します。季節によっても発電量は変動し、冬季は日照時間が短いため発電効率が低下します。また、長期間にわたり悪天候が続く場合は、電力供給に不安定さが生じることもあるでしょう。
これらの要因を踏まえて、安定した電力供給を求める場合には、他の電力源との併用が必要です。
3.4. 維持管理の手間とコスト
太陽光発電のシステムを維持管理するには、定期的なメンテナンスが必要です。このため、手間とコストがかかります。まず、パネルの清掃が不可欠で、汚れが蓄積すると発電効率が落ちます。また、冷却装置やインバーターなどの機器も定期的に点検し、必要に応じて交換・修理をしなければなりません。その費用も考慮する必要があります。
これらのメンテナンス作業は専門知識が求められるため、外部業者に依頼することが一般的で、その分コストも増加します。注意しておくべきポイントです。
4. 自家消費型太陽光発電の種類
自家消費型太陽光発電の種類は、発電設備の設置場所や電力供給の仕組みによって区別されています。それぞれの特徴を以下にまとめます。
4.1. 自社所有モデル
自社所有モデルは、企業が自社の敷地内に太陽光発電システムを設置し、所有する形態です。初期投資と維持管理の負担はありますが、長期的には大きな経済効果が期待できる選択肢です。
メリット
・自社で発電した電気を直接利用するため、電気代を大きく削減できる
・設備投資に対する税制優遇を受けられる可能性がある
・長期的には大きな経済効果が期待できる
デメリット
・設備導入に多額の資金が必要
・設備の維持管理や故障対応などを自社で行う必要がある
・システムの故障や不具合などのリスクを企業自身が負う
4.2. 自己託送
自己託送は、遠隔地に設置した太陽光発電設備で発電した電気を、送配電事業者のネットワークを介して自社施設に供給する仕組みです。敷地内に太陽光パネルを設置するスペースがない企業などに適しています。
電力を供給する流れ
1.遠隔地の自社所有の太陽光発電設備で電気を生成
2.一般送配電事業者の送配電ネットワークを利用
3.自社の施設やグループ企業に電力を供給
メリット
・自社で発電した電気を直接利用するため、電気代を大きく削減できる
・敷地内にパネルを設置できない企業でも、太陽光発電を導入できる
・広大な土地を確保できれば、大量の再エネ電力を供給できる
デメリット
・設備導入に多額の資金が必要
・送配電網の利用料である託送料金が必要
・一般送配電事業者との契約や計画値の報告が必要
・計画値と実際の発電量に差が生じた場合、ペナルティが発生する可能性がある
4.3. PPAモデル
PPAモデル(Power Purchase Agreement)は、第三者所有モデルとも呼ばれ、主に企業や施設が初期費用なしで太陽光発電システムを利用できる仕組みです。PPA事業者が設備を設置し、その電力を契約者が購入して使用します。
仕組み
・PPA事業者が契約者の施設(屋根や遊休地など)に太陽光発電設備を設置し、その所有権を保持する
・発電した電力を契約者が使用し、使用量に応じてPPA事業者に料金を支払う
・設備の維持管理はPPA事業者が行う
・契約期間終了後には、設備が無償で契約者に譲渡される場合がある
メリット
・設備設置費用が不要で、資金負担なく再生可能エネルギーを導入可能
・設備の維持管理はPPA事業者が行うため、手間やコストを削減できる
・電気料金が固定価格の場合もあり、将来的な価格変動リスクを回避できる
・設備が自社資産とならないため、固定資産税や減価償却費の負担がない
デメリット
・契約期間が10〜20年と長期になる場合が多く、途中解約が難しい
・屋根の老朽化や日射量不足などで、設備の設置が断られる場合がある
・自己所有している場合と比べて、電気代削減効果が小さい場合もある
・契約終了後は、譲渡された設備のメンテナンス責任が契約者に移る
4.4. PPAモデルのオンサイト型とオフサイト型
PPAモデルにはオンサイト型とオフサイト型があり、以下のような主な違いがあります。
オンサイト型 | オフサイト型 | |
---|---|---|
設置場所 | 契約者の敷地内(屋根や遊休地など)に設置 | 契約者の敷地外(遠隔地)に設置 |
電力供給方法 | 発電設備から契約者に直接供給 | 一般送配電事業者の送電網を経由して供給 |
発電規模 | 契約者の敷地面積に制限される | 広大な土地を確保できるため、大規模な発電が可能 |
電気料金 | 託送料金や再エネ賦課金が不要なため、比較的安価 | 託送料金や再エネ賦課金が発生するため、やや高額 |
非常用電源としての活用 | 停電時に非常用電源として活用可能 | 送電網を介するため、非常用電源としての活用は困難 |
複数拠点への供給 | 同一敷地内のみに供給 | 複数の事業所に電力を供給可能 |
導入の難易度 | 比較的容易 | 土地の確保や手続きが必要なため、やや難しい |
両者とも初期費用やメンテナンス費用が不要という共通点がありますが、これらの違いを考慮して、企業の状況や目的に応じて適切なモデルを選択することが重要です。
5. 自家消費型太陽光発電に関する税制優遇と補助金制度
自家消費型太陽光発電を導入する企業や家庭には、さまざまな税制優遇と補助金制度が用意されています。これらの制度をうまく活用することで、初期投資を抑えつつ効率的なエネルギー運用が可能になります。以下で詳しく解説していきます。
5.1. 税制優遇について
いくつかの税制優遇措置を活用することができますが、主な制度として「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」があります。
中小企業経営強化税制
この制度は、中小企業が経営強化のために行う設備投資を支援するものです。対象となる太陽光発電設備には、自家消費型太陽光発電システムと、自家消費率が50%以上の余剰売電型太陽光発電設備が含まれます。
これらの設備には、優遇措置として即時償却と税額控除が適用されます。即時償却とは、設備の取得費用の全額を初年度に経費として計上できる制度です。一方、税額控除では、設備取得費用の10%(資本金が3,000万円を超える場合は7%)を法人税から直接控除することが可能です。ただし、この二つの措置は併用できず、いずれかを選択する必要があります。なお、これらの優遇措置の適用期限は、令和7年(2025年)3月31日までとなっています。
中小企業投資促進税制
この制度は、中小企業経営強化税制よりも条件が緩和されています。対象となる太陽光発電設備には、自家消費型太陽光発電設備と、自家消費率に制限のない余剰売電型太陽光発電設備が含まれます。
これらの設備には、特別償却と税額控除という二つの優遇措置が設けられています。特別償却では、設備の取得価額の30%を償却することが可能です。また、税額控除では、設備の取得価額の7%を税額から直接控除することができます。ただし、税額控除は資本金3,000万円以下の法人に限定されている点に注意が必要です。なお、これらの優遇措置の適用期限は、令和7年(2025年)3月31日までとなっています。
注意点
これらの税制優遇は、全量売電型の太陽光発電設備は対象外となります。また、税制優遇を受けるためには一定の条件を満たす必要があり、所定の手続きを行う必要があります。さらに、制度ごとに対象となる条件や優遇措置が異なるため、自社の状況に合わせて最適な制度を選択することが重要です。導入を検討する際は、専門家に相談し、最新の情報を確認することをおすすめします。
出典:【法人の節税手法】2024年太陽光発電導入による節税対策を解説
5.2. 補助金制度の活用
いくつかの補助金制度を活用することができますが、主なものとして「環境省の補助金制度」と「経済産業省の補助金制度」について説明します。
環境省の補助金制度
「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」という補助金で、自家消費型太陽光発電システムと蓄電池の導入を支援するものです。補助対象には、自家消費型太陽光発電システム、定置用蓄電池、車載型蓄電池、そして充放電設備が含まれます。
補助率については、太陽光発電システムの場合、自己所有は1kWあたり4万円、PPAモデルやリースの場合は1kWあたり5万円、戸建て住宅は1kWあたり7万円と設定されています。一方、蓄電池については定額の補助が適用されます。補助の上限額は3,000万円であり、その内訳として太陽光発電設備には最大2,000万円、蓄電池などには最大1,000万円が設定されています。
経済産業省の補助金制度
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」という補助金で、需要家(電力を消費する企業や人)が発電事業会社と長期的に連携して太陽光発電設備を導入する際に利用できます。補助の対象となるのは、太陽光発電設備であり、蓄電池を併設したものも含まれます。また、補助の対象経費には、設計費、土地造成費、太陽光パネルやパワーコンディショナ、架台などの設備購入費が含まれます。
これらの補助金制度を活用することで、自家消費型太陽光発電の導入コストを抑えることができます。ただし、各制度には申請期限や条件があるため、詳細は各機関のウェブサイトで最新情報を確認することをおすすめします。また、専門家に相談し、自社の状況に最適な補助金を選択することが重要です。
出典:
自家消費型太陽光発電の導入で活用できる補助金まとめ
自家消費型の太陽光発電導入で利用できる補助金の種類、注意点など | 株式会社グッド・エナジー
関連ページ:
【5分でわかる】自家消費型太陽光発電とは?メリットやデメリットについて紹介 | グリラボ
【実例付き】自家消費型太陽光発電とは?仕組み・メリット・デメリットを分り易く解説
【5分でわかる】自家消費型太陽光発電とは?費用と効果を徹底解説 – 企業省エネ・CO2削減の教科書
自家消費型太陽光発電のメリットとは?| タイナビNEXT
【YouTube】今後は「自家消費型太陽光発電」が主流になる⁉️自家消費型にするメリットとは