工場や倉庫、オフィスの天井を見上げると、そこにはおそらく何十本もの蛍光灯が並んでいるはずです。長年にわたって日本の産業を支えてきたこの照明器具が、いよいよ「製造終了」という歴史的な転換点を迎えようとしています。2023年11月にスイス・ジュネーブで開催された水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)において、一般照明用の蛍光ランプについて2027年末までに製造・輸出入を段階的に廃止することが国際的に合意されました。この決定を受け、日本国内でも環境省が具体的な規制スケジュールを公表し、パナソニックや東芝ライテックといった主要メーカーが相次いで生産終了の方針を打ち出しています。
この記事では、いわゆる「2027年問題」とは何か、なぜ今すぐLED化を進めるべきなのか、工事にはどれくらいの費用がかかるのか、そして利用できる補助金制度まで、事業者が知っておくべきすべての情報を網羅的に解説します。
蛍光灯の「2027年問題」とは?水銀規制が引き起こす照明業界の大転換

水俣条約COP5(2023年)で決まった”水銀製品の段階的廃止”
蛍光灯には微量ながら水銀が含まれています。この水銀が環境や人体に与える影響を懸念し、国際社会は「水銀に関する水俣条約」という枠組みを通じて、水銀使用製品の削減を進めてきました。2023年10月30日から11月3日にかけてスイス・ジュネーブで開催された第5回締約国会議(COP5)では、一般照明用の蛍光ランプを対象に、製造・輸出入の規制を段階的に進める方針が示されました。環境省が公表した公式資料では、「2023年11月の『水銀に関する水俣条約 第5回締約国会議』において、一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入を、2027年までに段階的に廃止することが決定されました」と明記されています。
この国際合意を受け、日本国内でも「水銀汚染防止法 施行令改正」により、蛍光ランプの種類に応じて2026年1月1日以降、段階的に規制が施行されることになりました。つまり、これは単なる業界の自主判断ではなく、国際条約に基づく法的規制であり、日本のメーカーも例外なく従う必要があります。
2025年末〜2027年末にかけて種類別に製造禁止へ
すべての蛍光灯が一斉に製造禁止になるわけではありません。環境省の公式ウェブサイトによれば、蛍光ランプの種類によって禁止時期が段階的に設定されています。具体的には、電球形蛍光ランプは2026年1月1日より禁止(ただし30Wを超えるものは2027年1月1日より禁止)、コンパクト形蛍光ランプは2027年1月1日より禁止、そして直管形蛍光ランプと環形蛍光ランプは2028年1月1日より禁止となります。
ここで注意が必要なのは、直管形と環形には「ハロリン酸塩系」と「三波長系」という二つのタイプがあり、それぞれ禁止時期が異なる点です。環境省のPDF資料には、「『ハロリン酸塩系』が2026年末、『三波長系』が2027年末に、製造・輸出入が廃止されます」と記載されています。ハロリン酸塩系は一般的なタイプで、三波長系は高効率で明るいプレミアムタイプです。現場で「うちはどのタイプを使っているのか」を確認することが、今後の計画を立てる第一歩となります。

主要メーカーも生産終了を公表(=市場在庫頼みの時代へ)
国際条約と国内法規制の動きに呼応して、主要メーカーも相次いで生産終了の方針を発表しています。パナソニックは公式サイトで、「当社の蛍光ランプは2027年9月末までに生産終了します」と明言しています。東芝ライテックも2024年11月18日付のお知らせで、「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)が、昨年開催され、一般照明用の蛍光ランプについて2027年末までに段階的にすべての『製造』および『輸出入』を禁止することが合意されました。これを受け、弊社は『一般照明扱いの蛍光ランプ』を、2027年9月末までに生産終了し、販売は在庫限りとさせていただきます」と発表しています。
1951年から蛍光ランプを製造してきたパナソニック、照明事業130年の歴史を持つ東芝ライテック、そして三菱電機やNECライティング(現ホタルクス)といった日本の照明産業を支えてきた企業が、ほぼ同時期に生産を終了します。これは単に「製品ラインナップの見直し」というレベルではなく、日本の照明文化そのものが大きく転換する歴史的瞬間と言えるでしょう。メーカーが生産を終了すれば、市場に出回るのは「流通在庫」のみとなります。需要が残る一方で供給が減少するため、欠品・納期遅延・価格上昇は避けられません。
蛍光灯を使い続けるとどうなる?先送りリスクの実態

ランプの入手困難・価格高騰が現実に
製造が止まると、当然ながら新品の蛍光ランプは市場在庫のみとなります。日本照明工業会(JLMA)も公式ページで、「2027年末で一般照明用蛍光ランプ(蛍光灯)の製造・輸出入が禁止となることが閣議決定されました。製造禁止後に店頭やメーカーに在庫が無くなると、蛍光ランプ(蛍光灯)は手に入らなくなります」と注意喚起しています。特に直管形や環形を大量に使用している工場や倉庫ほど、この影響は深刻です。
過去にも似たような事例がありました。2020年に主要メーカーが水銀灯の生産を終了した際、在庫が枯渇した時期には価格が高騰し、入手困難になった現場が続出しました。蛍光灯もこれと同じ道をたどる可能性が高く、2026年後半から2027年にかけて「駆け込み需要」が発生し、価格が急騰することが予想されます。
交換用ランプが切れる=現場の運用が止まる
「ランプが切れたら交換すればいい」という従来の運用が、もはや通用しなくなります。倉庫の入出庫導線、工場の検品ラインや製造ライン、オフィスの執務スペースなど、照明が止まれば業務そのものが止まるリスクがあります。特に24時間稼働の工場や物流センターでは、照明不足は安全性の問題にも直結します。倉庫の照明を省エネ化するならLED!でも解説していますが、適切な照度を維持することは作業効率と安全性の両面で極めて重要です。
安定器の劣化によるトラブル(発煙・発火リスクも)
蛍光灯器具の寿命は約10〜15年とされていますが、これはランプだけでなく器具内部の安定器やソケット、配線なども劣化するためです。NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)は公式資料で、「蛍光灯照明を長期間使用すると、器具内の安定器などの部品が経年劣化し、破損・発煙・発火するおそれがあります」と警告しています。パナソニックも公式サイトで、安定器が劣化した実例を写真付きで紹介し、「ビニル電線被覆が熱のために変形し、もろくなっています。このまま使い続けると、以下のような事例や発火などの危険を招くことになります」と注意を促しています。

日本照明工業会(JLMA)も公式ページで、「例えば、器具内の部品(安定器・ソケット・電線など)が絶縁劣化等によりまれに発煙事故に至る場合があります」と指摘しています。製造から10年以上経過した照明器具は、外観では判断できない劣化が進行している可能性が高く、LED化は単なる省エネ対策ではなく、安全対策でもあるのです。
2027年後半の”駆け込み需要”で工事予約が取りにくくなる
LED化は部材手配だけで完結するものではありません。現地調査(現調)、停電調整、高所作業、夜間工事など、さまざまな工程が絡みます。期限が見えるほど依頼が集中し、工事枠が埋まってしまうのは容易に想像できます。特に工場の定期修理(定修)や棚卸し時期、繁忙期を避けたい場合、早めに計画を立てて工事会社と日程調整をしておかなければ、希望の時期に工事ができない事態が起こりえます。
LED照明に切り替える5つのメリット

メリット①:電気代の大幅削減(目安:50%以上も)
LED照明の最大の魅力は、消費電力の少なさです。同じ明るさを得るのに必要な電力は、蛍光灯と比較して約半分、場合によってはそれ以上の削減が可能です。例えば、直管蛍光灯(40W×2灯+安定器で約85W)をLEDベースライト(約40W)に交換すると、1台あたり約45Wの削減となり、これが100台あれば年間で数十万円の電気代削減につながります。
オフィスの節電対策完全ガイドでも詳しく解説していますが、照明は空調と並んでオフィスや工場の電力消費の大きな部分を占めています。点灯時間が長い工場、倉庫、店舗ほど削減額が大きくなり、投資回収期間も短くなる傾向があります。電気代の高騰が続く昨今、固定費である電力コストを恒久的に削減できるLED化は、経営戦略としても極めて有効です。

メリット②:長寿命(交換頻度が減る)
一般的にLED照明の寿命は約40,000〜60,000時間とされており、蛍光灯(約6,000〜12,000時間)と比較して数倍長持ちします。交換回数が減るということは、ランプ代だけでなく、高所作業や脚立作業に伴う人件費、作業時の事故リスク、そして業務の中断時間も削減できます。特に天井高の高い工場や倉庫では、交換作業に高所作業車が必要となり、その手配だけでもコストと時間がかかります。LED化によって交換頻度が大幅に減ることは、保全担当者の負担軽減にも直結します。

メリット③:CO2排出削減・環境負荷低減
省エネルギーはそのままCO2排出削減につながります。近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが企業評価の重要な指標となっており、取引先からの環境配慮要請も強まっています。LED化は「目に見える環境対策」として、企業のサステナビリティレポートやCSR報告書に記載できる具体的な実績となります。また、カーボンニュートラル宣言を行っている企業にとっては、Scope2(電力由来の間接排出)削減の有効な手段でもあります。
メリット④:明るさ・演色性の改善で作業性が上がる
「暗い」「ムラがある」「色が見にくい」といった照明の問題は、品質管理や安全性に直結します。LED照明は器具や設計次第で、照度の確保や見え方の改善がしやすくなります。例えば、食品工場では色の見え方(演色性)が品質判定に影響しますし、精密部品を扱う製造現場では十分な照度がないと不良品の見逃しにつながります。また、倉庫では暗がりが多いと転倒事故のリスクが高まります。LED化によって作業環境が改善されれば、生産性向上や事故防止にも寄与します。
メリット⑤:補助金で初期費用を抑えられる可能性
国や自治体では、省エネ設備導入を支援する補助金・助成金制度が用意されています。資源エネルギー庁の省エネルギー関連ページでは、令和5年度補正省エネ補助金や省エネルギー設備投資利子補給金などの情報が公開されており、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)が運営する省エネルギー投資促進支援事業費補助金も活用できます。
自治体レベルでも支援制度があります。例えば、東京都港区では省エネルギー診断に基づく設備改修助成として、LED照明を含む省エネ設備の導入費用の1/4(上限100万円)を助成しています。東京都千代田区では省エネルギー改修等助成制度で、LED照明の導入費用の50%(住宅は上限125万円、事業所は上限250万円)を助成しています。
ただし、補助金は「契約・発注前に申請が必要」など手順条件が厳しいことが多く、また年度や予算により変動します。実際、千代田区の令和7年度分は既に予算達成のため受付を終了しています(2025年10月10日時点)。見積もりを取ったら、すぐに申請可否の確認まで並行して進めることが重要です。
蛍光灯からLEDへの切り替えに必要な電気工事

工事が必要になりやすいケース(直管蛍光灯など)
オフィスや工場で広く使われている直管蛍光灯(いわゆるベースライト)は、器具内部に「安定器」という部品があり、この方式によってはLED化にあたり安定器の処理(バイパス等)や器具の交換が必要になります。日本照明工業会(JLMA)は直管LED光源に交換する場合の注意点として、「蛍光灯器具内の安定器は、将来的な保守作業の際に蛍光灯器具と誤認されることを防止するため、取り外す」「LED光源を使用者によって容易に脱着できないよう改造工事の一環として対策する」など、安全面での配慮が必要であることを明示しています。
また、JLMAのガイドラインでは、「LEDランプが正常点灯しているように見えても、器具の絶縁性能が不足している場合、そのまま使い続けると発火・発煙する恐れがあります」と警告しています。つまり、「ランプだけ交換すれば終わり」という単純な話ではなく、器具全体の状態を確認し、必要に応じて交換や改造工事を行うことが安全性の面で極めて重要なのです。
工事不要になりやすいケース(例:引掛シーリングの器具)
オフィスの一部や住宅で使われる小型の照明器具(シーリングライトや一部のダウンライト)は、器具の仕様によっては比較的容易に交換できる場合があります。例えば、引掛シーリングローゼットが付いている場合、器具本体を工具なしで取り外せることがあります。ただし、施設用の直管蛍光灯器具は構造が異なるため、同じように考えるのは危険です。現場ごとに専門業者の判断を仰ぐことが基本です。
LED化工事の一般的な流れ
LED化工事は、おおむね以下の流れで進みます。
①現地調査(現調)
まず、施設を訪問して器具の種類、台数、設置高さ、配線方式、分電盤の容量、点灯時間、必要照度などを詳細に確認します。この現地調査が最も重要なステップです。同じ「直管蛍光灯」でも、安定器のタイプ(グロースタート式、ラピッドスタート式、インバーター式)や器具の固定方法、天井の構造によって工事内容が大きく変わります。また、非常灯や誘導灯が含まれる場合は消防法の規定も関係するため、専門知識を持つ業者による確認が不可欠です。
②見積り・仕様決定
現調の結果を基に、器具交換か改造か、照度設計をどうするか、色温度(昼白色か電球色か)、非常灯・誘導灯の扱い、施工条件(夜間作業か休日作業か)などを決定し、見積もりを作成します。この段階で、補助金の申請可否も確認します。多くの補助金制度では「契約前の申請」が必須条件となっているため、見積もりを受け取ったらすぐに申請手続きに入る必要があります。
③施工
既設の蛍光灯器具を撤去し、新しいLED照明器具を取り付けます。配線の引き直しや安定器の取り外し、場合によっては天井の開口工事が必要になることもあります。高所作業が伴う場合は高所作業車を手配し、安全管理を徹底します。工場や倉庫では稼働を止められない場合が多いため、夜間や休日に工事を行うことが一般的です。試験点灯を行い、照度測定を実施して、設計通りの明るさが得られているかを確認します。
④廃材処理
撤去した蛍光ランプは、水銀を含む産業廃棄物として適正に処理する必要があります。事業所から排出される使用済み蛍光ランプは、廃棄物処理法で「水銀使用製品産業廃棄物」に該当し、専門の処理業者への委託が義務付けられています。適切な処理フローを確保することは、環境法令遵守の観点からも重要です。
工事費用の目安
LED化工事の費用は条件によって大きく変動しますが、一般的な目安を知っておくことは計画立案の助けになります。アイリスオーヤマの法人向け情報サイトでは、「蛍光灯からLEDへ交換する工事費用の相場は、1ヵ所あたり4,000〜8,000円程度が一般的です。これはLED本体価格(約1,000〜3,000円)と、配線や器具交換を含む工事費(約3,000〜5,000円)を合わせた金額です」と紹介されています。
ただし、この金額はあくまで標準的な条件での目安であり、以下のような要素で変動します。
- 高所作業車の必要性:天井高が5m以上の工場や倉庫では、高所作業車のレンタル費用が加算されます。
- 夜間・休日作業:稼働を止められない施設では、夜間や休日の工事となり、割増料金が発生します。
- 特殊器具:防爆仕様や防水仕様など、特殊な器具の場合は本体価格も工事費も高くなります。
- 台数規模:台数が多ければスケールメリットが働き、1台あたりの単価が下がることがあります。逆に少数の場合は出張費などの固定費の比率が高くなります。
- 配線工事の有無:既設配線が使えるか、引き直しが必要かで工事費が大きく変わります。
正確な費用を把握するには、必ず複数の業者から現地調査を経た見積もりを取ることが重要です。
LED化に使える補助金・助成金(例)

国:省エネ関連の支援制度
国の支援制度は年度や公募によって変わるため、最新情報を確認することが不可欠です。資源エネルギー庁の省エネルギー関連ページでは、令和5年度補正予算における省エネ補助金の特設ページや、省エネルギー設備投資利子補給金の公募情報が随時更新されています。
また、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)が運営する省エネルギー投資促進支援事業費補助金では、照明設備を含む省エネ設備の導入に対して支援が行われています。かつては高効率LED照明そのものが補助対象でしたが、現在は「調光制御設備」など、よりスマートな制御機能を持つシステムが補助対象の中心となっています。これは、一般的なLEDの普及がすでに進んだため、より高度な省エネ技術を推進する方向に政策がシフトしているためです。
自治体例:東京都港区(事業者向けの設備改修枠など)
港区では、中小企業者や個人事業者を対象に、省エネルギー診断に基づく設備改修助成を実施しています。LED照明のほか、エレベーターの改修や業務用冷蔵庫の買い替えなど、省エネ診断で提案された設備改修が対象となります。助成率は設置費用の1/4、上限額は100万円です。
この制度の特徴は、事前に省エネルギー診断を受けることが条件となっている点です。診断を通じて現状のエネルギー使用状況を把握し、最適な改修計画を立てることができます。また、診断結果に基づく改修であれば、LED照明以外の設備も組み合わせて申請できるため、総合的な省エネ対策として活用できます。
自治体例:東京都千代田区(省エネ改修等助成)
千代田区では、住宅、マンション共用部、事業所ビルを対象に、省エネルギー改修等助成制度を実施しています。LED照明の導入費用(税抜き)の50%が助成され、住宅の場合は上限125万円、事業所ビルの場合は上限250万円となります。港区と比較して助成率が高く、上限額も大きいため、大規模なLED化を検討している事業者にとっては非常に魅力的な制度です。
ただし、令和7年度分については予算達成のため受付が終了しています(2025年10月10日時点)。次回の令和8年度の実施内容は令和8年3月末頃に公開予定とのことです。自治体の助成制度は予算枠が限られており、年度初めに申請が集中する傾向があるため、情報公開と同時に速やかに申請準備を進める必要があります。
申請の注意点(落とし穴になりやすい)
補助金・助成金の申請では、以下の点に特に注意が必要です。
契約・発注前の申請が必須
多くの制度では、工事契約や発注を行う前に申請することが条件となっています。「工事が終わってから申請すればいい」と考えていると、補助対象外となってしまいます。見積もりを取得したら、契約前に必ず申請手続きを完了させる必要があります。
年度や予算による変動
補助金制度は年度ごとに内容が変わることがあり、また予算枠が埋まれば年度途中でも受付が終了します。千代田区の事例のように、早期に予算消化されることも珍しくありません。最新の公募情報を常にチェックし、チャンスを逃さないことが重要です。
対象設備の要件
単に「LED照明であれば何でも対象」というわけではありません。製品が一定の性能基準を満たしていることや、PSE認証を取得していることなど、細かな要件が設定されている場合があります。購入前に対象製品リストを確認するか、業者に確認してもらうことが必要です。
事業計画書や省エネ効果の算定
補助金申請では、導入によってどれだけの省エネ効果(CO2削減量、電力削減量など)が見込まれるかを定量的に示す必要があることが多いです。このため、専門業者のサポートを受けながら申請書類を作成することをお勧めします。
今すぐ始めるべき理由|2027年問題への備え

計画的に切り替えるほど、工事費・運用負担を抑えやすい
LED化を「いつかやらなければ」と先送りにするのではなく、計画的に進めることで、さまざまなメリットが得られます。まとめて発注することで、現地調査、養生、高所作業車の手配などのコスト効率が上がります。逆に、故障のたびに部分的に更新していくと、工事の度に出張費や段取り費用が発生し、割高になります。また、設置仕様がバラバラになると、在庫管理が複雑化し、保守性も低下します。
工場や倉庫では、照明器具が数百台〜数千台に及ぶこともあります。このような大規模施設では、エリアごとに段階的にLED化を進める「フェーズ分け」も有効です。例えば、第1期は製造エリア、第2期は倉庫エリア、第3期はオフィスエリアといった形で、予算と工事スケジュールを調整しながら計画的に進めることができます。
繁忙期(駆け込み)を避け、希望日で施工しやすい
2026年後半から2027年にかけて、駆け込み需要が発生することは間違いありません。電気工事業界も人手不足が深刻化しており、工事枠の確保が難しくなる可能性が高まっています。特に、工場の定期修理(定修)や棚卸し時期、繁忙期を避けて工事を実施したい場合、早めの計画と予約が不可欠です。
「2027年末までに何とかすればいい」と考えていると、希望の時期に工事業者が確保できず、結果的に不本意なタイミングで工事を実施せざるを得なくなるリスクがあります。今から動き始めることで、余裕を持って最適なタイミングを選べます。
電気工事会社への早めの相談が”勝ち筋”
LED化は、単に「LED照明器具を購入する」だけでは完結しません。現場に合った仕様で安全に工事することが本質です。このため、信頼できる電気工事会社に早めに相談することが、成功への最短ルートとなります。
相談の際に準備しておくと話がスムーズに進むのは、以下の情報です。
- 照明台数の棚卸し(種類別):直管蛍光灯が何本、環形蛍光灯が何本、電球形が何個など、種類別に台数を整理します。
- 点灯時間(エリア別):24時間点灯のエリア、日中のみ点灯のエリアなど、使用状況を把握します。これによって省エネ効果の試算ができます。
- 高所の有無:天井高が何メートルか、高所作業車が必要かを確認します。
- 停電可否(夜間/休日):稼働を止めずに工事できるか、夜間や休日の工事が必要かを明確にします。
これらの情報があれば、業者は現地調査前でもおおよその見積もりや工事プランを提示でき、スムーズに話が進みます。
BCP対策としてのLED化と非常用電源の重要性

LED化は省エネや安全性の向上だけでなく、事業継続計画(BCP)の観点からも重要です。近年、地震や台風などの自然災害が頻発しており、停電時の対応が企業の事業継続に直結する問題となっています。工場・オフィスのBCP対策|災害時も事業を止めない電源対策でも解説していますが、LED化によって消費電力が削減されることで、非常用電源(蓄電池やUPS)の容量を有効活用できるようになります。
例えば、停電時に最低限の照明を確保するために必要な電力が半分になれば、同じ蓄電池容量でも稼働時間を2倍に延ばせます。また、太陽光発電システムと蓄電池を組み合わせた自家発電設備を導入している場合、LED化によって日中に蓄電池への充電余力が増え、夜間の稼働時間を延ばすことができます。このように、LED化は単独の施策としてだけでなく、総合的なBCP対策の一環として位置づけることができます。
よくある質問(Q&A)


Q1. 蛍光灯の製造終了はいつですか?主要メーカーの動向は?

A1. 蛍光灯の製造終了時期は種類によって異なります。環境省の公式資料によると、電球形蛍光ランプは2026年1月から、コンパクト形は2027年1月から、そして直管形・環形は蛍光体の種類により2027年1月(ハロリン酸塩系)または2028年1月(三波長系)から製造・輸出入が禁止されます。
主要メーカーも法規制に先駆けて生産終了を進めています。パナソニックと東芝ライテックは共に2027年9月末までに蛍光ランプの全生産を終了すると公式発表しています。つまり、2027年9月末以降は国内主要メーカーの新規生産がゼロになり、市場は流通在庫のみとなります。2027年後半から2028年初頭にかけて在庫が枯渇し、入手困難になることが予想されます。

Q2. 2027年末以降、蛍光灯は使ってはいけないのですか?

A2. いいえ、使用そのものが直ちに全面禁止されるわけではありません。環境省の公式サイトにも「蛍光ランプの使用・販売・購入は禁止されません」と明記されている通り、禁止されるのは製造と輸出入のみです。
ただし、実務上は使い続けにくい状況になります。メーカー在庫と流通在庫が枯渇すれば交換用ランプが手に入らなくなり、需要が残る一方で供給が減少するため価格も上昇する可能性が高いです。さらに照明器具自体の寿命は10〜15年程度で、安定器などの部品が経年劣化します。ランプが手に入っても器具が故障すれば使えません。法的には使用禁止ではありませんが、実質的には計画的にLED化を進めざるを得ない状況になると言えます。

Q3. 蛍光灯を買いだめすれば解決しますか?

A3. 一時しのぎにはなりますが、根本的な解決にはなりません。大量の蛍光ランプを保管するには相応のスペースが必要で、割れやすい製品のため適切な保管環境も確保しなければなりません。複数の型番を混在して保管すると管理ミスも発生しやすくなります。
さらに重要な問題として、蛍光ランプは未使用でも経年劣化するため、長期保管すると点灯しない、すぐ切れるなどの問題が発生する可能性があります。そして最大の問題は、ランプの在庫があっても器具側の安定器やソケットが故障すれば照明は使えなくなることです。製造から10年以上経過した器具は、NITE(製品評価技術基盤機構)が警告しているように発煙・発火のリスクが高まります。日本照明工業会も入手困難化を前提に注意喚起を行っており、買いだめで時間を稼ぐよりも計画的にLED化する方が合理的な選択です。

Q4. 蛍光灯のLED化は工事不要ですが、危険ですか?

A4. はい、工事不要をうたうLED直管ランプへの交換は、条件によっては非常に危険です。日本照明工業会(JLMA)は公式ページで「LEDランプが正常点灯しているように見えても、器具の絶縁性能が不足している場合、そのまま使い続けると発火・発煙する恐れがあります」と警告しています。
蛍光灯器具は通常10V未満の電圧で点灯していますが、LED光源では100Vや200Vの電圧がかかるため、器具側の絶縁性能が追いつかず危険な状態になることがあります。製造から10年以上経過した照明器具は外観では判断できない劣化が進行しており、ソケットの接触不良による発熱、配線の被覆劣化による漏電、安定器が残ったままだと無駄な電力消費や異常発熱の原因になります。
JLMAは器具ごとの交換を推奨しており、やむを得ず工事不要LEDランプを使用する場合でも、器具内の電気部品の確認・交換、安定器の取り外し、適切な表示の実施など、結局のところ電気工事士による工事が必要です。工事不要という言葉に惹かれて安易にランプだけを交換することは火災や感電のリスクを伴う危険な行為であり、特に施設用の照明では必ず専門の電気工事業者に相談し、器具ごとの交換または適切な改造工事を実施することが安全です。

Q5. LED交換工事は自分でできますか?資格は必要ですか?

A5. 配線を触る作業が発生する場合、電気工事士等の資格が法律で義務付けられています。電気工事士法により、一般用電気工作物の工事には第二種電気工事士以上、自家用電気工作物の工事には第一種電気工事士または認定電気工事従事者の資格が必要です。
LED照明への交換工事では、配線の接続・切断、器具の天井への固定、分電盤での回路変更、安定器のバイパス工事などが発生することが多く、これらは電気工事士の資格が必要です。無資格工事は電気工事士法違反として罰金または懲役が科される可能性があり、感電による死亡事故や配線ミスによる火災のリスクもあります。さらに無資格工事による事故は火災保険や施設賠償責任保険の対象外となる可能性が高く、事故が発生した場合は個人または企業が全責任を負うことになります。施設用の照明では必ず電気工事士の資格を持つ専門業者に依頼することが法律でも安全面でも求められています。

Q6. 蛍光灯をLED化するための工事費用はいくらですか?

A6. アイリスオーヤマの法人向け情報サイトによれば、1ヵ所あたり4,000〜8,000円程度が一般的な目安で、この金額にはLED本体価格(約1,000〜3,000円)と工事費(約3,000〜5,000円)の両方が含まれています。
ただし実際の工事費用は条件によって大きく変動します。天井高が5m以上の工場や倉庫では高所作業車が必要となり、夜間や休日の工事では20〜50%の割増料金が発生します。防爆仕様や防水仕様の器具では本体価格が2〜5倍になることもあります。一方で施工台数が100台以上になるとスケールメリットが働き、1台あたり単価が下がります。
費用を抑えるポイントとして、まとめて発注することで段取り費用を削減でき、通常営業時間内に工事することで割増料金を避けられます。また国や自治体の補助金を活用すれば初期費用を削減できます。正確な費用を把握するには必ず現地調査を経た見積もりを複数の業者から取ることが重要です。

Q7. 40Wの蛍光灯をLED化すると電気代はいくらになりますか?

A7. 40W形直管蛍光灯2本と安定器で約85Wの消費電力が、LEDベースライトでは約40Wになり、電気代は約半分以下に削減できます。
電気料金単価を30円/kWh、稼働時間を1日10時間・年間250日として計算すると、蛍光灯の場合は年間約6,375円、LEDの場合は年間約3,000円となり、年間削減額は1台あたり約3,375円です。100台規模なら年間約34万円の削減となり、初期投資を約1.8年で回収できる計算になります。
24時間稼働の施設では効果はさらに大きくなり、1台あたりの年間削減額は約11,826円、100台規模なら年間約118万円の削減になります。点灯時間が長い工場や倉庫、台数が多い施設ほど削減効果が大きくなり、投資回収期間も短くなります。電気代の削減だけでなく、CO2削減による環境貢献やESG経営の観点からも大きなメリットがあります。

Q8. 補助金は必ず使えますか?

A8. いいえ、補助金は必ず使えるわけではありません。年度、地域、業種、要件によって変わり、予算枠が埋まれば年度途中でも受付終了となります。実際に千代田区の省エネ改修等助成制度は令和7年度分が2025年10月に予算達成のため受付を終了しました。
多くの補助金には中小企業限定、事業所の地域要件、一定以上の省エネ効果、製品要件、導入前の省エネ診断などの条件があります。さらに契約・発注前に申請が必須条件の場合が多く、見積もりを取って発注してから申請しようとすると対象外になります。
補助金を確実に活用するには、年度初めに資源エネルギー庁の省エネルギーページや各自治体のウェブサイトで情報収集を開始し、見積もりと申請を並行して進める必要があります。工事業者や中小企業診断士のサポートを活用することも有効です。ただし、補助金は使えればラッキー程度に考え、補助金なしでも投資回収できる計画を基本にすることをお勧めします。電気代削減効果だけでも多くの場合3〜5年で投資回収が可能です。

Q9. 蛍光灯をLED化するにはどこに頼めばいいですか?

A9. 地域の電気工事業者は地域密着で迅速な対応とアフターサービスが充実しており、中小規模のオフィスや店舗、小型工場に向いています。照明メーカーの特約店は製品知識が豊富でメーカー保証がしっかりしており、照度設計が重要な施設に適しています。既に付き合いのある設備管理会社があれば建物全体の設備を把握しているため相談しやすく、大規模工場や物流センターでは電気・空調・衛生設備を一括で扱える総合設備工事会社が便利です。
業者選定では、電気工事業登録や電気工事士の在籍などの資格・許可の確認、同業種・同規模での実績、現地調査の丁寧さや照度設計の提案力といった技術力、見積もりの内訳の明確さ、保証期間や故障時の対応といったアフターサービスを総合的に判断することが重要です。極端に安い見積もりは後から追加費用が発生するリスクがあり、極端に高い見積もりは過剰スペックや不要な工事が含まれている可能性があるため、必ず3社程度から見積もりを取って比較しましょう。
探し方としては、インターネットで「LED化 工事 [地域名]」で検索するほか、同業他社からの紹介が信頼性が高く失敗のリスクが低い方法です。LED化工事の成否は業者選びで8割決まると言っても過言ではなく、価格だけでなく実績、提案力、アフターサービスを総合的に判断し、信頼できるパートナーを選びましょう。

Q10. まず何から着手すればいいですか?

A10. LED化を成功させる最短ルートは、照明の種類別本数、エリア別の点灯時間、高所の有無と天井高、停電可否と工事可能時間帯の4つの情報を整理して、信頼できる電気工事会社に現地調査を依頼することです。
まず施設内の照明を種類ごとに正確に数え、直管蛍光灯、環形蛍光灯、電球形などに分けてリストアップします。図面があれば図面上に番号を振って管理すると分かりやすく、非常灯・誘導灯は消防法の規定があるため別途リストアップします。次にエリアごとの点灯時間と年間稼働日数を整理します。点灯時間が長いエリアほど省エネ効果が大きくなるため、24時間点灯なのか、日中のみなのかを明確にしましょう。
天井高が5m以上であれば高所作業車が必要となり工事費が大きく変わるため、エリアごとの天井高と高所作業車の要否を確認します。また24時間稼働で停電ができない場合は夜間工事が必要になり割増料金が発生するため、工事可能な時間帯や定期修理の時期を整理しておくことが重要です。
これらの情報が整理できたら、Q9で解説した方法で業者を選定し、無料の現地調査を依頼します。業者は現場で照明器具の実測、照度測定、天井の構造や配線の状態、分電盤の容量などを確認し、1〜2週間後に推奨LED照明器具の仕様、照度シミュレーション、省エネ効果の試算、工事計画、費用見積もり、利用可能な補助金情報を含む提案書を提出してくれます。
複数社の見積もりを比較検討し、価格だけでなく提案内容の質も評価して業者を選定します。
補助金が使える場合は必ず契約・発注前に申請し、交付決定通知を受領してから業者と契約します。全体スケジュールは小規模で2〜3ヶ月、中規模で3〜4ヶ月、大規模では4〜6ヶ月以上が目安です。いつかやらなければと先送りにせず、今日から現状把握を始めましょう。2027年末の駆け込み需要が始まる前に余裕を持って計画を進めることが、コスト面でも安全面でも最も賢明な選択です。
さらに詳しい情報や具体的な相談は、信頼できる電気工事業者や照明メーカーの特約店にお問い合わせください。また、倉庫の照明を省エネ化するならLED!、オフィスの節電対策完全ガイド、工場・オフィスのBCP対策も合わせてご覧ください。
まとめ:2027年問題は「そのうち何とかなる」課題ではない

蛍光灯の2027年問題は、供給縮小と工事集中が同時に来るタイプの課題です。環境省は公式資料で一般照明用蛍光ランプの規制方針を明確に示しており、パナソニックや東芝ライテックといった主要メーカーも生産終了を公表しています。これは単なる「メーカーの都合」ではなく、国際条約に基づく法的規制であり、逆らうことはできません。
工場、倉庫、オフィスなど、照明が止まると運用に直結する現場ほど、2026〜2027年に慌てないために、今から計画してLED化するのが最も合理的です。倉庫の照明を省エネ化するならLED!やオフィスの節電対策完全ガイドでも解説している通り、LED化は省エネや安全性の向上だけでなく、BCP対策としても有効です。
2027年末の駆け込み需要が始まる前に、余裕を持って計画を立て、適切な業者を選定し、必要であれば補助金を活用しながら、計画的にLED化を進めましょう。「いつかやる」ではなく、「今から始める」ことが、コスト面でも安全面でも、そして事業継続の観点からも、最も賢明な選択です。
参考資料
公的機関
- 環境省「一般照明用の蛍光ランプの規制について」
- 環境省PDF「一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入は2027年までに廃止されます」
- NITE「10年以上使用している蛍光灯照明は要注意」
- 資源エネルギー庁「省エネルギー」
- SII「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」
業界団体
メーカー
- パナソニック「従来光源照明器具・ランプの生産状況について」
- パナソニック「蛍光灯から器具ごとLEDに交換」
- 東芝ライテック「一般照明用蛍光ランプ製造禁止について」
- 東芝ライテック「蛍光ランプ(直管形・環形)生産・販売終了のお知らせ」
- アイリスオーヤマ「蛍光灯をLEDに変える工事の費用」
自治体
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