三相の漏電ブレーカーは、R・S・Tの3本の電線に流れる電流バランスを常に監視し、わずかな漏れ電流を検知すると自動で電気を止める仕組みです。単相と原理は同じですが、3本の線があることで見落としやすいポイントが存在します。
工場の設備担当者から「漏電ブレーカーがよく落ちる」という相談を受けるたびに感じるのは、「そもそも三相の仕組みを正しく理解していれば、原因の見当はつく」ということです。本記事では、三相の漏電ブレーカーの基本的な仕組みから、工場現場で実際に起きたトラブル事例、そして復旧・再発防止のための確認手順まで、現場経験をもとに体系的に解説します。
この記事で分かること:
- 三相の漏電ブレーカーがどのような原理で動作するか(ゼロ相和・ZCTの仕組み)
- 工場の現場で漏電ブレーカーが頻繁に落ちる原因の分類と切り分け方
- 三相特有の「接地相」にまつわる盲点と、現場でよくある誤解の実例
- リニューアル工事時に起こりがちな落とし穴と内線規程の余長の考え方
三相の漏電ブレーカーはどんな仕組みで動くの?

三相の漏電ブレーカーは、R・S・Tの3本の電線に流れる電流の合計をゼロと監視し、漏れがあれば感知して遮断する仕組みです。
電気回路では、正常な状態であれば送り出した電流と戻ってくる電流の合計はゼロになります。これを「ゼロ相和」と呼びます。三相3線式の場合、R・S・T各相に流れる電流のベクトル和(方向と大きさを合わせた合計)は、負荷が均等であれ不均等であれ、漏電がなければ理論上ゼロになります。

漏電ブレーカーの内部には「零相変流器(ZCT:Zero-phase Current Transformer)」というセンサーが組み込まれており、3本の電線を一括して貫通させることで電流の合計を常時監視しています。もし機器の絶縁不良などで電流の一部が大地に漏れ出ると、行きと帰りの電流に差(アンバランス)が生じます。この差をZCTが検知し、設定された感度電流(一般的に30mA)を超えると、引き外し装置が作動して瞬時に回路を遮断します。
感度電流には「高感度形(5mA〜30mA)」「中感度形(50mA〜1000mA)」「低感度形(3A〜20A)」などの区分があり、現行規格のJIS C 8201-2-2等で規定されています。工場の動力設備では、感電保護を目的とする場合は30mA以下、漏電火災防止を目的とする場合は100mA以下(動作時間0.2秒以下など)が目安とされています。

漏電ブレーカーが動作するまでの流れ
漏電ブレーカーが実際に動作するまでの流れを順を追って説明します。まず、機器の絶縁が劣化すると、電気が本来の回路ではなく大地(アース)に向かって流れ始めます。この漏れ電流がZCTを通過する際、3本の電線の電流バランスが崩れます。ZCTはこのアンバランスを検知し、「漏電リレー」に信号を送ります。漏電リレーが動作すると「引き外しコイル」に電流が流れ、ブレーカーの接点が開放されて電気が遮断されます。この一連の動作は、高感度形かつ「高速形」の場合、0.1秒以内に完了します(他にも動作時間が0.1秒を超え2秒以内の「時延形」などがあります)。
単相と三相の漏電ブレーカーの違い
単相と三相の漏電ブレーカーの最大の違いは、監視する電線の数と「接地相」の考え方です。単相は2本(または3本)の線を監視しますが、三相は3本の線を監視します。

| 項目 | 単相(単相2線式・単相3線式) | 三相(三相3線式) |
|---|---|---|
| 電線の数 | 2本 または 3本 | 3本(R・S・T相) |
| 主な用途 | 一般家庭、小規模な店舗の照明・コンセント | 工場の大型機械、動力設備(モーター、ヒーター等) |
| 監視の仕組み | 行きと帰りの電流の差を検知 | 3本の電流のベクトル和(合計)の乱れを検知 |
| 接地の考え方 | 中性線が接地されている | 変圧器の中間で接地されている相(接地相)がある |
| 代表的な電圧 | 100V / 200V | 200V(三相200V) |
単相の場合、漏電の検知原理は「送り線と帰り線の電流の差」という比較的シンプルな考え方で理解できます。一方、三相の場合は3本の電流のベクトル和を監視するため、「接地相がどれか」という知識が加わります。この接地相の概念こそが、三相特有のトラブルを生む原因になることがあります。詳しくは後述の「見落とされがちなポイント」で解説します。
なぜ工場の三相漏電ブレーカーはよく落ちるの?

工場の三相漏電ブレーカーが頻繁に落ちる原因のほとんどは、モーターやヒーターの絶縁不良、または配線被覆の傷みです。負荷バランスの問題は別の仕組み(過電流ブレーカー)なので混同しないことが大切です。
工場の現場で漏電ブレーカーが落ちる主な原因を以下に整理します。
| 原因の分類 | 具体的な状況 | 発見の難易度 |
|---|---|---|
| 機器の絶縁不良 | モーターのコイル劣化、ヒーターの絶縁劣化など。長年の使用により絶縁性能が低下し、電気が漏れやすくなる。 | 比較的容易(絶縁抵抗計で測定可能) |
| 配線の被覆の傷み | 工場内でケーブルが地面に擦れたり、台車やフォークリフトに踏まれたりして被覆が破れ、芯線が露出して漏電する。 | やや難(目視確認+絶縁測定が必要) |
| 環境要因(湿気・雨) | 屋外配線の被覆剥けや、結露しやすい環境での使用。雨水や湿気が侵入して漏電経路ができる。 | 難(再現性が低く、状況証拠が頼り) |
| 配線ミス(三相特有) | 接地相を考慮しない誤った結線など(詳細は後述)。 | やや難(知識がないと気づかない) |
現場では「ブレーカーが落ちる=機械が悪い」と思い込みがちですが、実際には配線の問題や環境要因が隠れていることも多く、原因の切り分けが重要です。
絶縁不良が「徐々に進行する」という特性

絶縁不良は突然起きるものではなく、長い時間をかけて少しずつ進行します。モーターやヒーターは使用年数とともに絶縁性能が低下しますが、初期段階では漏れ電流が感度電流(30mA等)に達しないため、漏電ブレーカーは動作しません。しかし、湿気が多い時期や高温時など、絶縁性能がさらに低下する条件が重なると、感度電流を超えてトリップします。
このため、「梅雨の時期だけ落ちる」「夏場だけ落ちる」という現象が起きます。これは絶縁不良が環境要因によって顕在化しているサインであり、季節が変わって症状が消えたとしても、根本的な原因(絶縁不良)は解消されていません。定期的な絶縁測定によって、こうした潜在的な問題を早期に発見することが重要です。
最初に確認するのは「漏電表示」と製品型式
ここで重要な区別をしておきます。ブレーカーが落ちたとき、現場では「漏電だ」と思い込みがちですが、実際には「電流の流れすぎ(過電流・短絡)」で落ちているケースも少なくありません。
漏電遮断器には、漏電だけを検出する製品だけでなく、ノーヒューズ遮断器と同様の「過負荷・短絡保護機能」を備えた製品(過電流保護付漏電遮断器)が広く使われています。このタイプの製品は、漏電だけでなく過電流でも遮断します。
したがって、漏電ブレーカーが落ちたときは、まず「漏電表示ボタン(またはトリップ原因表示)」が出ているかを確認してください。漏電表示が出ている場合は、漏れ電流を中心に調べます。表示が出ていない場合は、過電流や短絡によって遮断した可能性が高いため、負荷バランスや機器の過負荷を疑う必要があります。調査を始める前に、製品の型式と動作表示を正しく確認することが、原因究明の第一歩です。
インバータや高調波による不要動作と相の変更事例

工場の三相設備で漏電ブレーカーが落ちる原因として、絶縁不良や被覆の傷みに加えて、インバータや高調波、サージ(過渡電圧)による不要動作が非常に重要です。
工場のモーター制御に広く使われるインバータは、スイッチング動作によって高周波の漏れ電流を発生させます。また、機器に内蔵されたノイズフィルターの対地コンデンサを通じても、定常的に漏れ電流が流れます。これらの「合成漏れ電流」が漏電ブレーカーの感度電流を超えると、絶縁不良がなくてもトリップしてしまいます。これを防ぐためには、インバータ回路には高調波・サージ対応形の漏電遮断器を選定し、実測または算出した漏れ電流に応じた感度電流を設定する必要があります。インバータのエラーコードやトラブル対応については、「インバーター エラーコード即判ガイド」もあわせてご参照ください。
相の組み合わせ変更でトリップが解消した現場事例
スリーセンス株式会社の現場では、次のような事例がありました。三相200VのR・S・T線のうち、ある相の組み合わせから単相200Vを取り出していた配線を、接地相を含む別の組み合わせに変更したところ、漏電ブレーカーのトリップが解消したというものです。
現場の担当者は「同じ200Vでしょ」と考えて取り出し方(配線)を疑わず、「機械が悪いのでは」と機器側ばかり疑いがちです。しかし、対地電圧(大地に対する電位差)の観点から見ると、どの相から電源を取るかによって状況が変わることがあります。
ただし注意が必要なのは、「相の組み合わせだけが原因だった」とは断定できないという点です。メーカーの公式資料では、三相を一次側に接続した漏電遮断器について、二次側を単相のR-S、S-T、R-Tのいずれで使用しても「使用可能」と明記されています。したがって、「接地相を含まない組み合わせだから誤作動した」と一般化することはできません。
この現場事例でトリップが解消した背景には、相の変更だけでなく、以下のようないくつかの条件が複合的に関係していたと考えられます。
- 接続機器のノイズフィルターや対地コンデンサによる静電容量
- 機器固有の定常的な漏れ電流
- インバータや高調波による影響
- 設備全体の接地方式や相ごとの対地電圧の違い
- 漏電遮断器の種類や感度設定
絶縁測定で機器の絶縁に問題がないと分かった場合、機器の故障を疑う前に、こうした「インバータによる高周波漏れ電流」や「対地静電容量」、「相ごとの対地電圧の違い」など、回路全体の電気的特性を総合的に確認することが、真の原因究明につながります。
実際にあった三相漏電ブレーカーのトラブル事例

ヒーターの絶縁不良が原因で漏電ブレーカーが作動し、ヒーターとケーブルを交換して解決した事例があります。
ある工場のヒーター系設備での出来事です。ヒーター自体の絶縁状態が徐々に悪くなっており、特に湿気が多い時期にバチッと漏電ブレーカーが落ちました。原因はヒーターの絶縁不良でした。ヒーターを交換する際、念のためケーブルの絶縁抵抗も測定したところ、こちらも数値が悪かったため、ケーブルもすべて交換しました。以後は湿気の多い時期でも漏電ブレーカーが作動することはなくなりました。
このトラブルから学べる重要な教訓が2つあります。
第一に、機器の絶縁不良は徐々に進行するという点です。ある日突然落ちるのではなく、絶縁性能が少しずつ低下していき、湿気などの外的要因が加わったタイミングで感度電流を超えてトリップします。定期的な絶縁測定を行っていれば、「数値が下がってきている」という兆候を事前に把握できます。
第二に、機器だけでなくケーブルも同時に確認するという点です。今回の事例では、ヒーターを交換するだけでなく、ケーブルの絶縁も測定したことで、隠れていた問題を発見できました。機器を交換しても再発するケースは、ケーブル側の絶縁不良が残っていることが原因であることが多いです。ヒーターやモーターを交換する際は、必ず接続ケーブルの絶縁測定もセットで行うことを強くお勧めします。
湿気・雨による漏電の難しさ
湿気や雨による漏電は「条件が揃ったときだけ発生する」ため、同じ状況を再現しないと確認できず、原因究明が一番難しいトラブルの一つです。機械的な原因(断線など)は目視や測定で比較的分かりやすいですが、環境要因が絡む漏電は「雨の日にだけ落ちる」「梅雨の時期だけ落ちる」といった状況証拠を積み上げながら、総合的に判断する必要があります。
屋外配線の被覆剥けが原因の場合、雨天時に水が浸入して漏電経路ができ、晴天時には乾燥して症状が消えます。このような断続的なトラブルは、「直った」と思って放置すると再発を繰り返し、最終的には重大な事故につながる可能性があります。「雨の日だけ落ちる」という情報は、原因究明の重要な手がかりになります。
漏電ブレーカーのトラブル、どこから調べればいい?

調べる順番は「①配線の漏電を疑う → ②機械側を疑う → ③環境(雨・湿気)を疑う」の3ステップです。
漏電ブレーカーが落ちた際、闇雲に調べるのではなく、以下の順序で確認を進めるのが基本です。この順番には理由があります。配線の問題は「知識があれば比較的早く確認できる」のに対し、機器の絶縁不良は測定器が必要で、環境要因は再現性が低く時間がかかります。効率よく原因を絞り込むために、確認しやすいものから順に当たっていきます。
ステップ1:配線を疑う
まず、R・S・Tの相の組み合わせが正しいか、接地相を含んでいるかを確認します。前述の「接地相の盲点」に該当していないか、単相200Vを取り出している場合は特に注意が必要です。次に、ケーブルの絶縁抵抗測定を行い、配線経路での漏電がないかチェックします。工場内でケーブルが地面に擦れていたり、踏まれていたりする箇所がないかも目視で確認します。
配線の確認を最初に行う理由は、「知識があれば測定器なしでも確認できる部分がある」からです。相の組み合わせの確認は目視と知識だけでできます。ケーブルの被覆の傷みも、ルートを丁寧に追えば目視で発見できることがあります。
ステップ2:機械(モーター・ヒーター等)を疑う
機器本体の絶縁抵抗を測定し、経年劣化や内部の絶縁不良がないか確認します。絶縁抵抗計(メガー)を使用して、各相と大地間の絶縁抵抗値を測定します。低圧機器(三相200V)の場合、電気設備技術基準における法定最低基準は「0.2MΩ以上」ですが、内線規程では新設時の推奨値として「1MΩ以上が望ましい」とされています。経年劣化が進んだ機器では、この基準値ギリギリや数百kΩ以下になっていることもあります。
モーターやヒーターは定期的な絶縁測定を行っていない工場が多く、測定すると絶縁不良が見つかるケースが非常に多いです。「測定したことがない」という工場では、まず全機器の絶縁測定を実施することをお勧めします。測定値を記録しておくことで、次回測定時に「どれだけ低下したか」という変化を把握できます。
ステップ3:環境(雨・湿気)を疑う
屋外配線の被覆に傷がないか、結露や雨水の影響がないかを確認します。この要因は再現性が低く原因究明が難しいため、状況証拠(雨の日にだけ落ちる、梅雨の時期だけ落ちる等)を集めることが重要です。屋外配線の被覆剥けは目視で確認できることもありますが、地中埋設部分や管内配線の場合は確認が困難なため、専門家への相談が必要です。

確認手順のまとめ
| ステップ | 確認する場所 | 具体的にチェックすること |
|---|---|---|
| 1 | 配線 | R・S・Tの相の組み合わせが正しいか、接地相を含んでいるか。ケーブルの絶縁測定を行う。 |
| 2 | 機械(モーター・ヒーター等) | 絶縁抵抗を測定し、経年劣化がないか確認する。 |
| 3 | 環境 | 雨や湿気の影響がないか、屋外配線の被覆にむけがないか確認する(再現性が低く原因究明が難しい)。 |
なお、負荷バランスの悪さ(特定の相に電流が偏る)でブレーカーが落ちるのは、漏電ブレーカーではなく「過電流ブレーカー(配線用遮断器)」側の話です。これらを混同しないようにしましょう。
リニューアル工事で漏電ブレーカーを交換するときの注意点は?

古い漏電ブレーカーを新しい機種に交換する際は、ケーブルの長さ不足や端子サイズの違いに注意が必要です。
漏電ブレーカー自体の選定での失敗は少ないものの、リニューアル工事特有の落とし穴があります。新しい機器は昔のものに比べて小型化されていることが多く、いざ交換しようとすると「既設のケーブルが届かない」という事態が起こります。分電盤やブレーカーの容量選定については、「分電盤の容量計算・ブレーカー選定ガイド」も并せてご確認ください。また、端子のボルトサイズが変わっている(例:10mmから8mmへ)こともあり、その場合は端末処理(圧着端子の付け替えなど)をやり直す必要があります。
内線規程の「余長」について
本来、新設時にはプールボックス内でケーブルを一周させるなど「余長(余裕を持たせた長さ)」を持たせるのが基本です。内線規程(JEAC 8001)にも余長の規定がありますが、元の施工が悪く余長がない現場が少なくありません。
余長が確保されていない現場でリニューアル工事を行う場合、以下のような対応が必要になります。
- ケーブルを延長するための接続工事(ジョイントボックスの設置など)
- 最悪の場合、ケーブルの引き直し(コスト・工期が大幅に増加)
- 端末処理のやり直し(端子サイズが変わった場合)
リニューアル時はこうした既設の状況に柔軟に対応する技術が求められます。新設工事の際には、将来のリニューアルを見越して余長を十分に確保しておくことが、長期的なコスト削減につながります。
容量選定の注意点
配線用遮断器では容量計算の間違い(容量不足)で交換した経験もあります。漏電ブレーカーの定格電流は、接続する機器の定格電流や始動電流を考慮して選定する必要があります。特にモーターは始動時に定格電流の数倍の突入電流が流れるため、この突入電流に耐えられる容量の製品を選ぶことが重要です。容量が小さすぎると、機器の起動のたびにブレーカーが落ちるという事態になります。
漏電ブレーカーは単相でも三相でも使える?

漏電ブレーカーには単相用・三相用があり、極数(2極・3極・4極など)を正しく選ぶ必要があります。
漏電ブレーカーを選定する際は、接続する回路の方式に合わせた極数を選ぶことが基本です。誤った極数のものを使用すると、正常に漏電を検知できなかったり、法令に適合しない設備になったりする可能性があります。
| 回路方式 | 必要な極数 | 備考 |
|---|---|---|
| 単相2線式(1φ2W) | 2極(2P) | 一般的な100V回路など |
| 単相3線式の主幹 | 3極(3P) | 100V/200V共用。単3中性線欠相保護付が必要な場合あり |
| 単相3線式から取る100V分岐 | 2極(2P) | 100V回路用 |
| 単相3線式から取る200V分岐 | 2極(2P) | 200V回路用 |
| 三相3線式の主回路 | 3極(3P) | 工場の動力設備など |
| 三相4線式の主回路 | 4極(4P) | 4Pを基本に製品仕様を確認 |
なお、三相3線式と単相3線式はどちらも「3極(3P)」を使用しますが、製品の仕様(中性線欠相保護の有無など)が異なります。選定の際は必ずカタログや仕様書を確認し、回路方式に適合した製品を選んでください。
また、電気設備技術基準では、一定の条件を満たす電路には漏電遮断器の設置が義務付けられています。工場の設備を新設・改修する際は、法令の要件を確認した上で適切な製品を選定することが必要です。
監修者・磯辺幸二郎からのコメント

現場で長年、工場の電気設備に携わってきた経験から率直に言うと、「漏電ブレーカーが頻繁に落ちる」という状況は、メンテナンスの怠りが招いた必然的な結果であることがほとんどです。
絶縁不良は一日にして起きるものではありません。モーターやヒーターの絶縁性能は、使用年数とともに少しずつ低下していきます。定期的に絶縁抵抗を測定していれば、「数値が下がってきている」という兆候を事前に把握でき、計画的な交換や補修が可能です。しかし多くの工場では、「壊れてから直す」という事後対応が常態化しており、結果として突発的なトラブルと高い修繕コストに悩まされています。
また、インバータや高調波の影響、相の組み合わせによる対地電圧の変化など、工場の電気設備には複雑な要因が絡み合っています。「同じ200Vでしょ」という一言が、長期間にわたるトラブルの真の原因を見えなくしてしまうことも少なくありません。
私が現場で大切にしているのは、「当たり前のことを当たり前にやる」という姿勢です。定期的な絶縁測定、適切な余長の確保、全体の電気的特性を意識した確認——これらは特別な技術ではなく、電気工事の基本です。しかし、この基本が守られていない現場が多いからこそ、トラブルが起き、私たちのような専門業者に仕事が回ってくるという現実があります。
電気設備の安全は、日常的なメンテナンスと正しい知識の積み重ねによって守られます。「よく落ちるんだよね」という言葉が出てきたら、それはすでに設備が危険信号を発しているサインです。そのサインを見逃さず、早めに専門家に相談することが、工場の安全と生産性を守る最善の策だと、現場経験から強く感じています。
まとめ:三相漏電ブレーカーのトラブルを防ぐには

三相漏電ブレーカーのトラブルを防ぐには、定期的な絶縁測定と、配線・機械・環境の順で疑う習慣が重要です。
工場の担当者から「よく落ちるんだよね」と相談を受けることがありますが、そう言う所に限ってメンテナンスをしておらず、電気主任技術者にきちんと見てもらっていないケースがほとんどです。原因を特定して報告しても対策をやらないケースすらあります。逆に、きちんと管理している会社は、自分たちで測定して原因も把握した上で工事を依頼してきます。
当たり前のことを当たり前にやること。それがトラブルを防ぐ最大の近道であり、結果として設備の長寿命化やコスト削減にもつながります。
本記事のポイントを以下にまとめます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 仕組みの理解 | ZCTがゼロ相和の乱れを検知して遮断する。感度電流(30mA等)を超えると動作する。 |
| 落ちる原因の多くは絶縁不良 | モーター・ヒーターの絶縁劣化が最多。定期的な絶縁測定で予防できる。 |
| インバータや高調波の影響 | 絶縁不良がなくても、インバータやノイズフィルターの漏れ電流でトリップすることがある。 |
| 調べる順番 | 配線 → 機械 → 環境の順で確認する。 |
| リニューアル時の注意 | ケーブルの余長不足・端子サイズの変更に注意する。 |
三相漏電ブレーカーのトラブルでお困りの際は、工場・倉庫・商業施設の電気設備工事(設計・施工・保守)を手がけるスリーセンス株式会社へお気軽にご相談ください。
この記事は、スリーセンス株式会社の現場経験に基づき、電気工事の専門的な視点から解説しています。電気工事に関するご相談はスリーセンス株式会社までお気軽にどうぞ。
よくある質問(FAQ)


Q1. 漏電ブレーカーは単相でも三相でも使えますか?

単相用・三相用は別の製品で、極数(2極・3極・4極)が異なります。単相3線式には3極、三相3線式には3極、三相4線式には4極を使うなど、回路に合わせた選定が必要です。また、単相3線式用には中性線欠相保護付(PASF)の製品が必要な場合もあります。誤った極数の製品を使用すると、漏電を正常に検知できない可能性があるため、必ず回路方式に適合した製品を選定してください。

Q2. 漏電ブレーカーが何回も落ちる原因は何ですか?

ほとんどの原因は絶縁不良(モーターやヒーターの劣化)です。次いで配線被覆の傷みや湿気による漏電が続きます。なお、負荷バランスの問題は別の仕組み(過電流ブレーカー)なので区別して考える必要があります。「何回も落ちる」という状況は、絶縁不良が徐々に進行しているサインである可能性が高く、早急な絶縁測定と原因の特定が必要です。

Q3. ブレーカーの3相とは何ですか?

3本の電線(R・S・T)を使って電気を送る方式で、工場の大きな機械(モーター等)を動かす動力用として使われます。3本の電線がそれぞれ120度ずつ位相がずれた交流電圧を持つことで、単相と比べて効率よく大きな電力を送ることができます。家庭用の単相100V・200Vとは異なり、三相200Vは主に工場や業務用設備に使用されます。

Q4. 単相3線式のブレーカーの仕組みは?

単相3線式は2本の電圧線(L1・L2)と1本の中性線(N)の計3本で構成され、100Vと200Vの両方が取り出せる仕組みです。中性線が接地されており、L1-N間またはL2-N間で100V、L1-L2間で200Vが得られます。三相3線式とは電圧の取り出し方や波形が根本的に異なり、混同しないことが重要です。

Q5. 漏電ブレーカーと配線用遮断器(過電流ブレーカー)は何が違いますか?

漏電ブレーカーは「漏れ電流(漏電)」を検知して遮断し、配線用遮断器は「流れすぎた電流(過電流・短絡)」を検知して遮断するという役割の違いがあります。漏電ブレーカーには過電流保護機能も兼ね備えたものがありますが、基本的な動作原理は異なります。工場のブレーカーが落ちたとき、「漏電ブレーカーが落ちたのか、過電流ブレーカーが落ちたのか」を確認することが、原因究明の第一歩です。

Q6. 漏電ブレーカーの点検はどのくらいの頻度で行うべきですか?

法定点検(電気主任技術者による定期点検)に加え、湿気の多い時期(梅雨・夏場)の前などに絶縁測定を行うことが望ましいです。前述のヒーター系設備のトラブル事例のように、絶縁不良は湿気が多い時期に顕在化しやすいため、シーズン前の点検が有効です。また、漏電ブレーカー自体のテストボタンを定期的に押して動作確認を行うことも基本的なメンテナンスの一つです。
