地震、台風、豪雨——日本列島を襲う自然災害は、企業の存続を脅かす深刻なリスクとなっています。2024年4月、介護事業者を中心にBCP(事業継続計画)策定が義務化されました。義務化から約1年8ヶ月が経過し、多くの企業が事業継続への意識を高めています。
しかし、計画を策定するだけでは不十分です。災害時に本当に事業を守れるかどうかは、電源対策の充実度に大きく左右されます。製造業、情報通信業、医療・福祉施設など、電力供給が途絶えると事業継続に深刻な影響を及ぼす業種では、電源対策がBCPの要となるのです。
実際にBCPを策定・実践している企業の取り組みを動画で確認できます。東京・江東区の細田木材工業では、創業94年で社員数40人ほどの中小企業ながら、2021年に10カ月をかけてBCPを策定しました。能登半島地震(2024年1月)では、直接被害を受けた企業の41.3%が営業停止を余儀なくされ、全体の約6割の企業が何らかの被害を受けました。また、1億円以上の被害を受けた企業も複数報告されています。
本記事では、災害時にも事業を止めないための電源対策について、電気設備の専門的観点から詳しく解説します。
BCPにおける電源対策の重要性

BCP(事業継続計画)とは何か
BCP(Business Continuity Plan)とは、企業が自然災害やシステム障害、感染症パンデミックなどの緊急事態に直面した際、事業の中断を最小限に抑え、重要業務を継続または早期復旧させるための計画です。 BCPは単なる防災対策ではありません。取引先からの信頼を確保し、従業員の雇用を維持し、地域経済への貢献を果たすという点で、経営戦略上の重要課題となっています。
2024年4月から介護事業者を中心にBCP策定が完全義務化されました。義務化から1年8ヶ月が経過した現在、介護職員の約8割が義務化を認識しているものの、策定済みの介護施設は約6割にとどまっており、まだ対応が完了していない事業所も存在します。このことからも、計画の策定だけでなく実効性のある対策の重要性が浮き彫りになっています。
東京商工会議所の2025年調査によれば、東京都内企業のBCP策定率は39.5%にとどまっており、大企業では63.0%と比較的高い一方で、中小企業では28.0%と3割未満という状況です。まだまだ普及の余地があると言えるでしょう。
なぜ電源対策がBCPの核心なのか
現代の企業活動は、電力なしには成り立ちません。工場の生産設備、オフィスのサーバー、通信機器、照明、空調など、あらゆる業務が電力に依存しています。停電が発生すると、企業は極めて深刻な影響に直面します。
生産・業務面では、生産ラインの停止による製品の品質低下や納期遅延が発生します。特に製造業では、ラインが一度止まると再稼働までに長時間を要し、その間の機会損失は計り知れません。また、サーバーダウンによるデータ損失や業務システムの停止は、情報通信業やサービス業にとって致命的です。さらに、通信手段の喪失により、社内外との連絡が途絶え、適切な意思決定や指示伝達ができなくなります。
安全・セキュリティ面でも大きなリスクがあります。照明が消失すれば、従業員や来客の避難経路確保が困難になり、二次災害のリスクが高まります。セキュリティシステムが停止すれば、防犯リスクが増大し、重要な資産や情報が危険にさらされます。空調が停止すれば、機器の過熱による故障リスクも無視できません。
2011年の東日本大震災では、計画停電により多くの企業が操業停止を余儀なくされ、サプライチェーン全体に大きな混乱が生じました。**能登半島地震(2024年1月)でも、直接被害を受けた企業の41.3%が営業停止に追い込まれ、被害額が1億円以上に達した企業も複数ありました。**こうした経験から、電源の確保と冗長化がBCP対策の最優先課題として認識されるようになったのです。
災害時に企業が直面する電気リスク
企業を取り巻く電気リスクは、外部要因と内部要因の両面から理解する必要があります。
外部要因による電気リスク 自然災害による停電は、最も一般的で深刻な外部リスクです。地震による送電設備の損傷は、広範囲かつ長期間にわたって電力供給を遮断します。台風や豪雨による電線の断線や変電所の水没も、地域全体の電力インフラを麻痺させます。落雷による瞬間的な電圧変動や停電は、精密機器に深刻なダメージを与えることがあります。
さらに、インフラの脆弱性という構造的な問題もあります。日本の送電網の多くは高度経済成長期に整備されたもので、老朽化が進んでいます。近年の猛暑や寒波による電力需給のひっ迫は、計画停電のリスクを高めています。北海道で発生したような広域停電(ブラックアウト)のリスクも、決して他人事ではありません。
内部要因による電気リスク 受変電設備(キュービクル)は、電力会社から供給される高圧電力(6,600V)を建物内で使用できる低圧電力(200V/100V)に変換する重要な設備です。この受変電設備のトラブルは、内部要因による最大のリスクと言えます。
経年劣化による絶縁不良や過熱は、長年使用してきた設備では避けられない現象です。保守点検を怠れば、突発的な故障のリスクが飛躍的に高まります。また、事業拡大に伴って電力使用量が増加し、設備容量が不足して過負荷状態になるケースも少なくありません。
設備の老朽化は、特に深刻な問題です。多くの企業では、受変電設備の更新時期を逃しているケースが見られます。特に設置から20年以上経過した設備は、絶縁材料の劣化や接点の摩耗により、災害時に限らず平時でも突然の故障リスクが高まっています。たとえ外部からの電力供給が復旧しても、受変電設備が損傷していれば建物内への給電ができず、事業を再開できないのです。
関連記事:キュービクルの点検・保守管理完全ガイド
これらのリスクに対処するには、外部からの電力供給が途絶えても事業を継続できる自立型の電源システムが不可欠です。
事業を止めないための電源の冗長化とは

電源冗長化の基本概念
電源の冗長化とは、主電源が停止した場合でも、複数の予備電源によって電力供給を継続できる体制を構築することです。単一の電源に依存せず、多重化された電源システムを整備することで、事業継続性を大幅に向上させます。これは、航空機や医療機器など人命に関わる分野で古くから採用されてきた考え方ですが、近年では一般企業のBCP対策としても不可欠な要素となっています。
冗長化の3つのレベル
電源の冗長化には、企業の規模や業種、予算に応じて3つのレベルがあります。
基本的な冗長化(レベル1)は、商用電源に加えて非常用発電機を設置し、瞬断対応のためにUPSを配置する構成です。これは最も一般的で、比較的低コストで導入できる構成ですが、発電機の起動には10~40秒程度の時間を要するため、その間はUPSでカバーする必要があります。
高度な冗長化(レベル2)になると、複数系統からの商用電源を引き込み、本線と予備線を確保します。さらに自家発電設備と蓄電池システムを組み合わせ、重要負荷への電源ルートを二重化します。片方の系統でトラブルが発生しても、もう一方の系統で電力供給を継続できるため、信頼性が格段に向上します。
完全自立型システム(レベル3)は、太陽光発電と大容量蓄電池を組み合わせ、商用電源に依存しない電力供給を実現します。コージェネレーションシステムやマイクログリッドの構築により、災害時でも長期間にわたって自立した電力供給が可能です。初期投資は高額ですが、平常時の電気代削減効果も期待でき、環境負荷低減にも貢献します。
重要負荷の優先順位付け
すべての設備に冗長化を施すのは、コスト面で現実的ではありません。そこで重要なのが、事業継続に必要な重要負荷を特定し、優先順位を付けることです。
最優先負荷(レベル1)には、サーバーや通信機器、制御システムや監視装置、非常用照明や避難誘導灯、セキュリティシステムなど、生命や安全に直結する設備、または事業の根幹を支える設備が該当します。これらの設備への電力供給が途絶えると、即座に事業継続が困難になるため、最も信頼性の高い電源対策が必要です。
第二優先負荷(レベル2)には、生産設備の一部(最重要工程)、冷蔵・冷凍設備、換気・空調設備(必要最小限)など、事業継続に重要だが、一時的な停止が許容できる設備を位置づけます。これらは段階的に電力供給を再開する対象として計画します。
第三優先負荷(レベル3)には、一般照明やコンセント、その他の補助設備など、停電時に優先度が低い設備を分類します。これらは完全復旧の段階で電力供給を再開すれば十分です。
この優先順位に基づき、限られた予算の中で最も効果的な電源対策を実施することが可能になります。重要なのは、自社の事業特性を深く理解し、何が本当に事業継続に不可欠かを見極めることです。
非常用電源設備の種類と選定ポイント

非常用電源設備には、主に自家発電設備、蓄電池システム、UPS(無停電電源装置)の3種類があります。それぞれの特性を理解し、用途に応じて適切に選定・組み合わせることが重要です。
| 項目 | 自家発電設備 | 蓄電池システム | UPS |
|---|---|---|---|
| 供給容量 | ⭐⭐⭐ 大容量 | ⭐⭐ 中容量 | ⭐ 小容量 |
| 供給時間 | ⭐⭐⭐ 数日~数週間 | ⭐⭐ 数時間~十数時間 | ⭐ 数分~数十分 |
| 起動時間 | 10~40秒 | 瞬時 | 瞬時 |
| 初期コスト | 高い | 高い | 低い |
| ランニングコスト | 中程度 | 低い | 低い |
| 騒音・排気 | あり | なし | なし |
| 適した用途 | 工場・大規模施設 | オフィス・店舗 | サーバー・精密機器 |
1. 自家発電設備
自家発電設備は、ディーゼルエンジンやガスタービンで発電機を駆動し、電力を供給するシステムです。燃料さえ確保できれば、長時間にわたって安定した電力供給が可能な、最も伝統的で信頼性の高い非常用電源です。
この設備の最大の利点は、大容量の電力供給が可能なことです。数十kWから数千kWまで、施設の規模に応じた容量を選択できます。燃料を補給し続ければ、数日から数週間にわたる長時間運転にも対応できるため、大規模災害で商用電源の復旧に時間がかかる場合でも、事業を継続できます。また、既存の電気設備との連系が比較的容易で、消防法で設置が義務付けられている建物では、BCP対策と法令遵守を同時に満たせる利点があります。
一方で、起動までに10~40秒程度の時間を要する点は注意が必要です。この間に瞬断が発生するため、後述するUPSとの組み合わせが不可欠です。また、定期的な試運転とメンテナンスが法令で義務付けられており、燃料の保管・管理、排気や騒音への配慮も必要です。特に都市部では、騒音規制により設置場所が制限される場合があります。
工場の生産設備、大規模オフィスビル、病院、データセンターなど、大容量・長時間の電力供給が必要な施設に最適です。選定の際は、必要な電力容量を正確に算出することが重要です。同時使用負荷を考慮し、余裕を持った容量設計が求められます。起動方式は、自動起動が基本ですが、保守点検時の手動起動機能も必要です。燃料タンクの容量は、72時間運転を目安に設計するのが一般的です。設置スペースと騒音規制を確認し、消防法・建築基準法の基準に適合した機種を選定しましょう。
外部参考:非常用発電機の設置基準と点検義務(総務省消防庁)
2. 蓄電池システム
蓄電池システムは、リチウムイオン電池や鉛蓄電池に電力を蓄え、停電時に放電して電力を供給するシステムです。近年、技術革新により性能が大幅に向上し、太陽光発電との組み合わせで平常時の電気代削減とBCP対策を両立できる優れた選択肢として注目されています。
最大の特徴は、瞬時に電力供給を開始できる無瞬断性です。停電が発生した瞬間に、ミリ秒単位で電力供給に切り替わるため、精密機器やサーバーへの影響を最小限に抑えられます。騒音や排気ガスが発生しないクリーンな電源であるため、設置場所の制約が少なく、オフィスビル内にも設置可能です。太陽光発電と連携すれば、平常時はピークカットによる電気代削減、停電時は非常用電源として機能し、一石二鳥の効果が得られます。設置スペースも発電機に比べて比較的小さく、屋内設置が可能です。
ただし、供給可能時間は蓄電容量に依存し、数時間から十数時間が限界です。長期停電には対応できないため、発電機との組み合わせが推奨されます。初期導入コストは高額ですが、補助金を活用することで負担を軽減できます。また、電池の劣化により、10~15年程度で交換が必要になる点も考慮すべきです。
中小規模のオフィス、店舗、通信基地局、太陽光発電を導入している施設に適しています。選定の際は、必要なバックアップ時間を正確に算出し、適切な蓄電容量を選ぶことが重要です。蓄電池の種類は、リチウムイオン電池が主流ですが、用途によっては鉛蓄電池も選択肢になります。太陽光発電との連系可否を確認し、補助金・助成金の活用可能性を調査しましょう。保証期間とメンテナンス体制も、長期的なコストに影響するため、十分に確認が必要です。
3. UPS(無停電電源装置)
UPSは、蓄電池とインバーターを内蔵し、停電や電圧変動から精密機器を保護する装置です。瞬断を許さない重要機器の保護に特化した、データセンターや医療施設には不可欠な設備です。
完全無瞬断での電力供給が最大の特徴です。商用電源から内部のバッテリー電源への切り替えが瞬時に行われ、接続された機器は停電を感知しません。さらに、電圧変動やノイズからの保護機能により、電源品質を常に一定に保ちます。コンパクトで設置が容易なため、既存の施設にも追加導入しやすく、比較的低コストで導入可能です。
一方で、バックアップ時間は数分から数十分と短く、主にシステムの安全なシャットダウンや短時間の瞬断対策に用いられます。大容量化すると急速にコストが上昇するため、保護対象を絞ることが重要です。また、バッテリーは消耗品であり、4~6年ごとの定期交換が必要です。
サーバールーム、医療機器、通信機器、生産ラインの制御装置など、瞬断が許されない精密機器の保護に最適です。選定の際は、保護対象機器の消費電力と必要なバックアップ時間を正確に把握することが第一歩です。UPS方式には、常時インバータ方式、ラインインタラクティブ方式、常時商用方式があり、保護レベルとコストのバランスで選択します。バッテリーの種類は、従来の鉛蓄電池に加え、最近ではリチウムイオン電池を採用した機種も増えています。シャットダウン制御機能があれば、バッテリー残量が少なくなった時点で、接続機器を自動的に安全にシャットダウンできます。将来的な拡張性も考慮し、余裕のある容量設計が望ましいでしょう。
外部参考:UPSと蓄電池の違いを徹底解説
各設備の比較と最適な組み合わせ
3つの設備を比較すると、自家発電設備は大容量で長時間の供給が可能ですが起動に時間を要し、蓄電池システムは瞬時の供給が可能で中程度の容量と時間に対応し、UPSは完全無瞬断ですが短時間のバックアップに限られます。初期コストは発電機と蓄電池が高く、UPSは比較的低額です。ランニングコストは発電機が燃料と保守で中程度、蓄電池とUPSは低めです。騒音や排気は発電機のみで発生し、蓄電池とUPSはクリーンです。
多くの施設では、UPSと自家発電設備、またはUPSと蓄電池システムの組み合わせが推奨されます。UPSで瞬断を防ぎ、発電機や蓄電池で長時間のバックアップを実現する二段構えの体制が、最も信頼性の高い電源対策となります。例えば、サーバールームであれば、UPSで瞬断から保護し、自動起動する発電機で長期停電に備える構成が理想的です。工場では、制御装置をUPSで保護し、生産ラインを発電機でバックアップする組み合わせが効果的です。
受変電設備の防災対策

受変電設備(キュービクル)が損傷すると、たとえ電力供給が復旧しても建物内への給電ができなくなります。そのため、受変電設備自体の防災対策も極めて重要です。東日本大震災では、津波による浸水で多くの受変電設備が使用不能になり、電力が復旧しても建物に電気が供給できない事態が発生しました。
受変電設備に必要な防災対策
耐震対策は、地震大国日本では最優先の対策です。設備本体をアンカーボルトで強固に固定し、地震の揺れによる転倒を防ぎます。変圧器には減震装置を設置し、内部機器へのダメージを軽減します。配管やケーブルラックも耐震支持を施し、地震時の破損を防ぎます。周辺機器の転倒防止策も忘れてはいけません。
浸水対策は、近年の豪雨災害の頻発により重要性が増しています。地下に設置された受変電設備は、豪雨や津波による浸水リスクが高いため、可能であれば上階への移設を検討すべきです。移設が困難な場合は、止水板や防水扉を設置し、浸水を防ぎます。排水ポンプの設置も効果的ですが、停電時でも稼働できるよう、非常用電源の確保が必要です。最近では、防水型キュービクルも開発されており、更新時の選択肢として検討する価値があります。
設備の更新・リニューアルは、予防保全の観点から計画的に進めるべきです。老朽化した受変電設備は、災害時のリスクが飛躍的に高まります。設置後20年を目安に更新計画を策定し、予算を確保しましょう。更新前でも、予防保全による部品交換で寿命を延ばすことが可能です。更新の際は、最新の耐震基準に適合した設備を選定し、将来の拡張性も考慮に入れます。
予備電源との連系は、受変電設備の防災対策において非常に重要です。受変電設備と非常用発電機・蓄電池を適切に連系することで、停電時の自動切替を実現できます。切替スイッチやATS(自動切替開閉器)を設置し、人の手を介さずに瞬時に切り替わる仕組みを構築します。これにより、夜間や休日の停電でも、無人で電源が切り替わり、事業を継続できます。
関連記事:キュービクル設置基準の完全ガイド
受変電設備の定期点検
電気事業法により、自家用電気工作物には法定点検が義務付けられています。点検を怠ると、停電や波及事故につながる危険性があるだけでなく、法令違反として罰則の対象にもなります。
月次点検または隔月点検では、外観を目視で確認し、変色、損傷、異音がないかチェックします。計器の指示値が正常範囲内にあるか確認し、異常な電圧や電流がないか監視します。接地抵抗を測定し、安全性を確保します。絶縁抵抗を測定し、漏電のリスクを早期に発見します。
年次点検(精密点検)は、停電を伴う詳細な診断です。絶縁耐力試験により、絶縁性能の劣化を検出します。保護継電器の動作試験で、異常時に正しく動作するか確認します。接点の清掃と増締めにより、接触不良を防ぎます。これらの点検は、電気主任技術者または外部の電気保安協会に委託して実施します。
外部参考:受変電設備の法定点検について
定期点検を確実に実施することで、災害時の設備故障リスクを大幅に低減できます。点検費用は年間30万円から100万円程度かかりますが、設備の突然の故障や事業停止のリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。
法令で義務付けられている防災設備

非常用照明
非常用照明は、停電時でも避難経路を確保するための重要な設備です。建築基準法第12条および建築基準法施行令第126条の4により、一定規模以上の建築物には設置が義務付けられています。
居室、廊下、階段に設置し、停電時に床面で1ルクス以上(蛍光灯・LEDは2ルクス以上)の照度を確保しなければなりません。蓄電池内蔵型で30分以上の点灯が必要とされ、常用電源と別系統の電源を確保することが求められます。これにより、火災などで常用電源が遮断された場合でも、非常用照明は点灯し続けます。
建築基準法第12条に基づく定期点検が必要で、点検頻度は6ヶ月から3年ごとと、用途や規模により異なります。点検は一級建築士または二級建築士が行い、結果を特定行政庁(都道府県や市町村)に報告します。点検を怠ると、是正命令や罰金の対象となるだけでなく、災害時に人命を危険にさらすことになります。
外部参考:非常用照明の設置基準を徹底解説
避難誘導灯
避難誘導灯は、停電時や煙で視界が悪い中でも、避難口の位置を明示し、安全な避難を誘導する設備です。消防法施行令第26条により、防火対象物には設置が義務付けられています。
避難口誘導灯は各避難口の上部に設置し、緑色の避難口マークで避難口を明示します。通路誘導灯は避難経路の曲がり角や階段に設置し、避難方向を示します。非常時に20分以上(大規模施設は60分以上)の点灯が必要とされ、蓄電池または非常電源による電源確保が求められます。
消防法第17条の3の3により、機器点検を6ヶ月に1回、総合点検を1年に1回実施しなければなりません。機器点検では外観、機能、点灯状態を確認します。総合点検では、負荷運転試験により規定時間の点灯を確認し、予備電源の容量を確認し、配線や接続部の劣化をチェックします。点検結果は、消防署または消防本部へ報告する必要があり、報告頻度は建物の用途や規模により1年または3年ごとと定められています。
外部参考:誘導灯の設置基準と点検義務
点検を怠った場合の罰則
建築基準法や消防法に基づく点検・報告義務を怠ると、様々なペナルティが科される可能性があります。消防署や特定行政庁から是正命令が出され、改善されない場合は使用停止命令に至ることもあります。罰金刑は最大30万円から100万円で、点検不備の場合は30万円以下、設置命令違反の場合は100万円以下となっています。
さらに深刻なのは、火災保険の補償対象外となる可能性です。点検義務を怠っていた場合、保険会社から「重過失」とみなされ、火災が発生しても保険金が支払われないケースがあります。最悪の場合、点検不備による事故で人命が失われれば、経営者の法的責任が問われ、業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。
「知らなかった」「忙しくて点検できなかった」という言い訳は通用しません。法令遵守は企業の社会的責任であり、従業員や来客の安全を守る義務です。定期的な点検を確実に実施し、記録を適切に保管しましょう。
工場・オフィス別のBCP電源対策事例

実際にBCP電源対策を実施した企業の事例を、3つのパターンで紹介します。
【事例1】製造業(工場)のBCP電源対策
従業員数150名の電子部品製造業では、生産ラインの停止による納期遅延と品質トラブルのリスクが経営課題でした。顧客からの納期厳守要求が厳しく、停電による生産停止は即座に取引停止につながる可能性がありました。
そこで、300kWの自家発電設備を導入し、重要生産ラインへ72時間の電力供給を可能にしました。自動起動システムにより、停電発生から30秒以内に給電が開始されます。さらに、50kVAのUPSを設置し、生産管理システムと制御装置を保護することで、発電機起動までの瞬断にも対応しました。
受変電設備の耐震化も実施し、変圧器に減震装置を設置し、配電盤の耐震固定を強化しました。電源ルートを二重化し、重要負荷への予備回路を増設することで、片方の回路にトラブルが発生しても、手動で切り替えて電力供給を継続できる体制を整えました。
この投資により、停電時でも主要生産ラインの稼働を継続できるようになり、取引先からの信頼性が大幅に向上しました。事業継続力強化計画の認定も取得し、税制優遇を受けられるようになりました。さらに、災害時には近隣企業への電力供給協力も可能となり、地域貢献にもつながっています。
投資額は約2,500万円(自家発電設備、UPS、工事費含む)でしたが、取引先からの安定受注により、3年程度で投資回収できる見込みです。
【事例2】オフィスビルのBCP電源対策
従業員数300名の情報通信業では、サーバーダウンによるサービス停止とデータ損失のリスクが最大の懸念でした。24時間365日のサービス提供を顧客に約束しており、わずか数分の停電でも大きな損失につながります。
100kWhの蓄電池システムと50kWの太陽光発電を組み合わせることで、サーバールームと通信機器に8時間の電力供給を確保しました。平常時はピークカットにより、年間約200万円の電気代削減も実現しています。100kVAのUPSをN+1構成で冗長化し、1台が故障してももう1台で電力供給を継続できる体制を構築しました。サーバーの安全なシャットダウン制御機能により、蓄電池の残量が少なくなった時点で、自動的にシステムを安全に停止させます。
複数系統からの電力引き込みも実施し、異なる変電所から2ルートで受電することで、片系統が停電しても自動的に切り替わり、サービスを継続できます。非常用照明と誘導灯をLED化することで、消費電力を削減し、長寿命化によりバッテリー容量を最適化しました。
この結果、ゼロダウンタイムを実現し、顧客満足度が大幅に向上しました。太陽光発電との組み合わせにより、CO2排出量を30%削減し、環境経営の面でも評価されています。東京都のBCP実践促進助成金を活用し、導入コストの2/3を補助してもらえたことで、実質負担額は約1,300万円に抑えられました。災害時には従業員の安全も確保でき、安心して働ける職場環境が整いました。
投資額は約4,000万円でしたが、補助金活用後の実質負担は約1,300万円、電気代削減効果により6~7年で投資回収できる見込みです。
関連記事:オフィスの節電対策完全ガイド
【事例3】中小企業オフィスの低コストBCP対策
従業員数20名のサービス業では、BCP対策の必要性は理解していたものの、限られた予算が大きな課題でした。大規模な設備投資は難しいが、最低限の事業継続性は確保したいという要望がありました。
5kWhの小型蓄電池とポータブル電源を組み合わせることで、サーバーと通信機器への最低限のバックアップを実現しました。段階的に導入することで、コストを分散し、資金繰りへの影響を最小限に抑えました。1.5kVAのデスクトップUPSを主要PCとネットワーク機器に設置し、低コストで即効性のある対策を実施しました。
非常用照明と誘導灯の法定点検を点検業者と保守契約を結んで確実に実施し、コンプライアンスを確保しました。さらに、クラウドサービスを活用してデータをクラウドバックアップし、リモートワーク環境を整備することで、オフィスが使用できなくなっても事業を継続できる体制を構築しました。
この結果、最小限の投資で事業継続性を確保でき、事業継続力強化計画の認定を取得して税制優遇を受けられるようになりました。従業員からも「会社が自分たちの安全を真剣に考えてくれている」と好評で、定着率が向上しました。
投資額は約300万円で、段階的に導入したことで資金繰りへの影響を最小限に抑えられました。規模に応じた現実的なBCP対策として、他の中小企業の参考になる事例です。
電気設備の定期点検の重要性

非常用電源設備は、普段は使用されないため、定期点検を怠ると「いざという時に動かない」リスクが高まります。日本内燃力発電設備協会の調査によれば、東日本大震災時に整備不良によって作動しなかった発電機が全体の41%、始動したものの途中で異常停止したものが27%もあり、合計で約7割近い発電機が十分に機能しませんでした。
つまり、設備を導入しただけで安心してはいけないのです。
なぜ定期点検が重要なのか
非常用電源設備は「保険」のようなものです。普段は使わないが、いざという時に確実に機能しなければ意味がありません。しかし、長期間使用しないと、燃料の劣化、バッテリーの自然放電、接点の酸化、潤滑油の劣化など、様々な問題が発生します。定期的に点検し、試運転することで、これらの問題を早期に発見し、対処できます。
さらに、法令により点検が義務付けられており、違反すれば罰則の対象となります。消防法では、非常用発電機の点検を6ヶ月ごとと年1回義務付け、建築基準法では、非常用照明の点検を6ヶ月から3年ごとに義務付けています。電気事業法では、受変電設備の点検を月次または隔月、年次で義務付けています。
点検を怠った結果、災害時に設備が機能せず、従業員や顧客に被害が発生すれば、経営者の責任が問われます。最悪の場合、業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。
点検の種類と頻度
非常用発電機の点検は、月次点検で外観、燃料、冷却水を確認します。半年ごとには無負荷運転試験を実施し、エンジンが正常に起動するか確認します。年次点検では負荷運転試験を実施し、実際に負荷をかけて定格出力で運転できるか確認します。法定点検として、消防法に基づく総合点検を6ヶ月または1年ごとに実施します。
蓄電池の点検は、月次点検で外観と電圧を測定します。年次点検では内部抵抗測定と容量試験を実施し、バッテリーの劣化状態を確認します。交換時期は、リチウムイオン電池で10~15年、鉛蓄電池で5~7年が目安です。
UPSの点検は、月次点検で外観とバッテリー電圧を確認します。年次点検ではバッテリー負荷試験と切替試験を実施し、停電時に正常に切り替わるか確認します。バッテリー交換は4~6年ごとに必要です。
受変電設備の点検は、月次または隔月点検で電気事業法に基づく日常点検を実施します。年次点検では停電を伴う精密点検を実施し、絶縁抵抗や接点の状態を詳細にチェックします。電気主任技術者による保安管理が必須です。
点検費用の目安と確実な実施のために
年間の点検費用は、非常用発電機で20万円から50万円、蓄電池システムで10万円から30万円、UPSで5万円から15万円、受変電設備で30万円から100万円が目安です。設備規模や点検内容により変動しますが、事業停止のリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。
点検を確実に実施するためには、信頼できる電気設備会社と年間保守契約を結び、点検漏れを防止することが重要です。法定点検の記録は保管義務があるため、電子化して管理すると効率的です。年間の保守費用を予算化し、計画的にメンテナンスを実施しましょう。非常用設備の使用方法や点検の重要性を従業員に周知し、全社的な意識を高めることも大切です。
補助金・助成金の活用

BCP電源対策には多額の投資が必要ですが、各種補助金・助成金を活用することで、導入コストを大幅に軽減できます。「お金がないからBCP対策ができない」と諦める前に、利用可能な支援制度を確認しましょう。
主な補助金制度(2025年度・2026年度)
東京都内の中小企業であれば、BCP実践促進助成金が有力な選択肢です。中小企業者は補助対象経費の1/2以内、小規模企業者は2/3以内の補助を受けられ、補助上限額は1,500万円です。
2025年度(令和7年度)の状況:
– 第3回募集:2026年1月7日(水)9:00~1月14日(水)17:00
– 助成対象期間:2026年4月1日~7月31日
非常用発電機、蓄電池、UPS、感染症対策設備などが対象で、年2~3回程度の公募があります。申請には、BCPの策定または事業継続力強化計画の認定が必要です。詳細は東京都中小企業振興公社のウェブサイトで確認できます。
事業継続力強化計画認定制度は、全国の中小企業が利用できる国の制度です。2025年11月時点で、認定を受けた企業は累計約73,000件に達しており、中小企業のBCP対策が着実に進んでいます。事業継続力強化計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けることで、設備投資の特別償却16%の税制優遇、低利融資制度の利用、各種補助金の審査で加点、信用保証枠の拡大などのメリットが得られます。
2025年11月には策定の手引きが最新版に更新されており、感染症やサイバー攻撃など現代特有のリスクにも対応した内容となっています。申請方法は、中小企業庁のウェブサイトで詳しく解説されています。
ものづくり補助金は、中小企業の設備投資を支援する制度で、補助率は1/2から2/3、補助上限は数百万円から数千万円で類型により異なります。
2025年度の状況:
– 第21次:2025年10月24日締切(採択発表:2026年1月下旬予定)
– 第22次:2025年12月26日~2026年1月30日申請受付(採択発表:2026年4月下旬予定)
2026年度も制度継続が見込まれており、BCP対策を含む生産性向上の設備投資が対象となります。
補助金申請のポイント
補助金申請を成功させるには、事前準備の徹底が不可欠です。まず、BCP計画を策定し、どのような対策が必要か明確にします。電気設備会社から見積書を取得し、投資額を確定します。投資効果を試算し、補助金なしの場合と比較してどれだけ負担が軽減されるか示します。
申請タイミングの把握も重要です。多くの補助金は年度初めや秋頃に公募が開始されるため、事前に情報を収集しておきましょう。公募開始と同時に申請できるよう、準備を進めておくことが採択率を高めます。
専門家の活用も効果的です。中小企業診断士や行政書士に依頼すれば、申請書類の作成をサポートしてもらえます。電気設備会社と連携し、技術的な部分と補助金申請を一体的に進めることで、スムーズに導入できます。
複数制度の併用も検討しましょう。国の制度と都道府県の制度、市区町村の制度を組み合わせることで、より大きな支援を受けられる場合があります。ただし、重複申請が不可の場合もあるため、事前に確認が必要です。
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補助金を活用することで、大規模な投資も現実的な選択肢になります。「自社には無理」と諦めず、まずは情報収集から始めてみましょう。
よくある質問(Q&A)


Q1:BCP対策の電源設備導入にどれくらいの費用がかかりますか?

企業規模や必要な電力容量によって大きく異なりますが、一般的な目安をお伝えします。
従業員20名程度の小規模オフィスであれば、200万円から500万円程度で基本的な対策が可能です。デスクトップUPSと小型蓄電池、ポータブル電源の組み合わせで、サーバーと通信機器をバックアップできます。
従業員100名程度の中規模オフィスでは、1,000万円から3,000万円が目安です。UPSと蓄電池システム、または小型の発電機を組み合わせることで、重要業務を継続できる体制を構築できます。
従業員100名以上の工場では、2,000万円から1億円の投資が必要になることもあります。大容量の自家発電設備、蓄電池システム、UPSを組み合わせ、生産ラインの稼働を維持するには、それなりの投資が必要です。
ただし、補助金を活用することで、実質負担額を1/2から2/3程度に抑えられます。東京都のBCP実践促進助成金なら、小規模企業者は2/3の補助を受けられるため、300万円の投資で実質負担は100万円です。補助金の活用を前提に、計画を立てることをお勧めします。

Q2:非常用発電機と蓄電池、どちらを選ぶべきですか?

この質問は非常に多く寄せられますが、用途と優先事項によって選択が変わります。
大容量・長時間の電力供給が必要で、工場などの生産設備を稼働させたい場合は、非常用発電機が適しています。燃料の保管・管理が可能で、72時間以上の長期停電に備えたい場合も発電機が有力です。大規模施設で数百kW以上の電力が必要な場合、蓄電池では容量が不足します。
一方、中小規模のバックアップで十分で、騒音や排気を避けたい場合は、蓄電池システムが適しています。太陽光発電と組み合わせて平常時の電気代削減も狙いたい場合、蓄電池は優れた選択肢です。ピークカットによる基本料金削減効果も期待できます。設置場所が限られており、屋内設置が必要な場合も、クリーンな蓄電池が有利です。
実は、多くの場合、UPSと蓄電池と発電機の組み合わせが最も信頼性の高い構成となります。UPSで瞬断を防ぎ、蓄電池で数時間のバックアップを実現し、発電機で長期停電に対応する三段構えが理想的です。平常時は蓄電池で電気代削減、停電時は蓄電池で短時間バックアップ、長期停電時は発電機で対応という役割分担が効果的です。
予算の制約があれば、まず最優先負荷をUPSで保護し、次に蓄電池または発電機のどちらかを導入し、将来的に両方を揃えるという段階的なアプローチもあります。

Q3:受変電設備の更新時期の目安は?

一般的に設置後20年が更新の目安とされていますが、使用環境や保守状況によって大きく変わります。
絶縁抵抗値が低下し、基準値を下回るようになったら更新を検討すべきです。異音、異臭、発熱が頻繁に発生するようになったら、内部で劣化が進行している可能性が高いです。保護装置が誤動作するようになったら、制御系統に問題がある兆候です。部品の製造が中止され、修理が困難になったら、更新のタイミングと考えましょう。
定期点検で設備の状態を把握し、電気主任技術者や保安協会の助言を受けながら、計画的な更新を行うことが重要です。突然の故障で緊急更新を迫られると、工事期間中の事業停止や割高なコストが発生します。余裕を持って計画し、補助金の活用も検討しながら、適切なタイミングで更新しましょう。

Q4:非常用照明や誘導灯の点検を怠るとどうなりますか?

法令違反として、消防署や特定行政庁から是正命令が出されます。改善されない場合、使用停止命令に至ることもあります。罰金刑は、点検不備の場合は30万円以下、設置命令違反の場合は100万円以下です。
さらに深刻なのは、火災保険の補償対象外となる可能性です。点検義務を怠っていた場合、保険会社から「重過失」とみなされ、火災が発生しても保険金が支払われないケースがあります。
最悪の場合、災害時に照明や誘導灯が機能せず、人命が失われれば、経営者の法的責任が問われ、業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。
「知らなかった」「忙しくて点検できなかった」という言い訳は通用しません。法令遵守は企業の社会的責任であり、従業員や来客の安全を守る義務です。年間数万円から十数万円の点検費用をケチって、企業の存続が危うくなるリスクを冒すべきではありません。

Q5:BCP対策を始めるには何から着手すればよいですか?

まず現状分析から始めましょう。自社の重要業務を洗い出し、どの業務が停止すると最も深刻な影響があるか特定します。現在の電源設備を確認し、非常用電源の有無、容量、点検状況を把握します。地震、水害、停電など、自社が直面するリスクを特定します。
次に、BCP計画を策定します。事業継続目標(RTO:目標復旧時間、RPO:目標復旧時点)を設定し、どのくらいの時間で業務を再開するか、どの時点のデータまで復旧するかを明確にします。必要な電力容量を算出し、同時使用負荷を考慮して、どのくらいの電力が必要か計算します。優先順位を決定し、最優先負荷、第二優先負荷、第三優先負荷に分類します。
専門家に相談することも重要です。電気設備会社に診断を依頼し、現状の設備状況と必要な対策を評価してもらいます。補助金活用を検討し、利用可能な制度を調査し、申請をサポートしてくれる専門家を探します。
最後に、段階的に実施します。最優先設備から導入し、一度にすべてを整備するのではなく、重要度の高いものから順次導入します。予算に応じて計画的に整備し、無理のない範囲で年次計画を立て、着実に進めましょう。
重要なのは、「完璧を目指して何もしない」より、「できることから始める」ことです。まずは小さな一歩から踏み出しましょう。

Q6:太陽光発電+蓄電池だけでBCP対策は十分ですか?

残念ながら、多くのケースで不十分です。太陽光発電と蓄電池には大きな制約があります。
夜間や悪天候時は発電できないため、災害は昼間の晴天時に起こるとは限りません。地震は深夜に発生することも多く、太陽光発電が機能しない時間帯の対策が必要です。蓄電池の容量には限界があり、数時間から十数時間のバックアップが限界です。長期停電には対応できません。大容量負荷には対応困難で、工場の生産ラインなど大電力を消費する設備は、蓄電池だけではバックアップできません。
理想的なのは、太陽光発電と蓄電池と非常用発電機の三段構えです。平常時は太陽光発電でコスト削減し、売電収入や自家消費による電気代削減を実現します。停電時は蓄電池で短時間バックアップし、瞬時に電力供給を開始し、数時間の停電に対応します。長期停電時は発電機で対応し、数日から数週間の長期停電でも事業を継続できます。
この組み合わせにより、あらゆるシナリオに対応でき、平常時の経済性と非常時の信頼性を両立できます。初期投資は高額ですが、補助金を活用すれば実質負担を大幅に軽減できます。事業の特性と予算に応じて、最適な組み合わせを専門家と相談しながら決めましょう。

Q7:電気工事の資格がなくても自社でできることはありますか?

電気工事には資格が必要ですが、準備段階では自社でできることが多くあります。
BCP計画の策定は、自社の業務を最もよく知る社内メンバーで行うべきです。重要業務のリストアップと優先順位付けも、現場の声を反映させることが重要です。補助金申請の準備として、事業計画書の作成や必要書類の収集は自社で対応できます。従業員への安全教育は、定期的に実施し、非常用設備の使用方法や避難手順を周知します。備蓄品の管理として、食料、水、医薬品などの備蓄を計画的に行い、賞味期限を管理します。
実際の電気設備の設置や点検は、必ず有資格者に依頼しましょう。電気工事士の資格がない者が電気工事を行うのは法令違反であり、感電事故や火災のリスクもあります。専門家に任せるべきことと自社でできることを明確に区別し、効率的にBCP対策を進めましょう。
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まとめ

企業のBCP対策において、電源の確保は最も重要な要素の一つです。本記事でご紹介した内容を振り返りましょう。
電源の冗長化が事業継続の鍵です。単一の電源に依存せず、多重化された電源システムを構築することで、災害時でも事業を継続できます。重要負荷の優先順位付けにより、限られた予算を効果的に配分し、最も重要な設備から順次対策を実施します。自家発電設備、蓄電池システム、UPSを適切に組み合わせることで、あらゆるシナリオに対応できる体制を整えます。
設備選定は用途に応じて行います。大容量・長時間のバックアップが必要なら自家発電設備、中容量・中時間なら蓄電池システム、瞬断対策にはUPSが適しています。最適な組み合わせで信頼性を最大化し、平常時の経済性と非常時の信頼性を両立させましょう。
法令遵守と定期点検が不可欠です。非常用照明や誘導灯の法定点検、受変電設備の保安管理、非常用発電機の定期試験を確実に実施し、点検記録を適切に保管します。「いざという時に動かない」という最悪の事態を避けるため、定期点検への投資を惜しんではいけません。
補助金を活用してコストを軽減しましょう。東京都のBCP実践促進助成金、国の事業継続力強化計画認定制度、その他各種補助金を積極的に活用することで、実質負担を1/2から2/3程度に抑えられます。「お金がないからBCP対策ができない」と諦める前に、利用可能な支援制度を確認しましょう。
段階的な整備で確実に進めます。現状分析から始め、優先順位に基づいて計画的に導入し、専門家のサポートを活用することで、無理なく着実にBCP対策を進められます。「完璧を目指して何もしない」より、「できることから始める」ことが重要です。
この記事が、貴社のBCP対策における電源設備の選定・導入のお役に立てれば幸いです。不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
※本記事の情報は2025年12月時点のものです。補助金制度や各種支援策は年度ごとに更新されるため、最新情報については各行政機関の公式サイトをご確認ください。
