電気図面を手渡されたとき、記号の意味がわからず業者の説明を黙って聞いているだけ、という経験はないでしょうか。工場・倉庫・ビルの設備担当者や総務担当者にとって、電気工事は発注頻度こそ高くないものの、一度の判断ミスが安全事故や予算超過につながりかねない重大な業務です。そのリスクを減らすための第一歩が、図面に描かれた記号を「自分で読める」状態にしておくことです。

この記事では、JIS(日本産業規格)で定められた電気用図記号のうち、発注担当者が実務でよく目にするものを厳選して解説します。「記号の意味」だけでなく、「それが工事費にどう影響するか」という視点を加えることで、見積書の妥当性チェックや業者とのコミュニケーションに直接役立てていただける構成にしました。電気図面の全体像や種類については、「電気図面の見方を徹底解説!初心者でもわかる基本構成と読み方のコツ」も合わせてご参照ください。

カテゴリ別「電気用図記号」一覧表

発注担当者がまず覚えるべき電気図記号トップ20

多忙な発注担当者のために、図面チェックや見積確認の場で「これだけは外せない」記号を20個先出しします。業者との打ち合わせ前にここを確認するだけで、会話の理解度と質問の精度が格段に上がります。

🔌 コンセント

No.図記号名称・仕様発注時のポイント
1壁付コンセント(2口)★最重要★ 壁付コンセント(2口)
2P15A ダブルコンセント
傍記「2」=2口。1口は数字省略
住宅・オフィス・店舗すべての標準仕様。図面で最も多く出てくる記号。まずこれを覚える。
2接地極付コンセント接地極付コンセント
2P15A E
傍記「E」=Earth(接地専用の差込極が本体に設けられたタイプ)
洗面所・洗濯機・冷蔵庫・PC周辺に使用。対応プラグを挿すだけで接地接続できる。
3接地端子付コンセント接地端子付コンセント
2P15A ET
傍記「ET」=Earth Terminal(ネジ式端子付き)
アース線をネジで別途固定するタイプ。E(接地極付)とは別物。混同注意。
4防雨形コンセント防雨形コンセント
2P15A WP
傍記「WP」=Weather Proof
屋外・軒下専用。防水カバー付き。屋内用との混同に注意。
5抜止形コンセント抜止形コンセント
2P15A LK
傍記「LK」=Lock
プラグを回転させてロックするタイプ。医療・工場・サーバー室など抜け防止が必要な箇所。

🔘 スイッチ

スイッチ記号は「黒い小丸(●)+右の文字」の組み合わせが基本。文字で種類を区別する。
出典:Panasonic 配線図記号

No.図記号名称発注時のポイント
6単極スイッチ
● のみ
タンブラスイッチ 1P15A
最も基本のスイッチ。1カ所から照明をON/OFF。部屋の照明に最多使用。
7●33路スイッチ
●3
3W15A
廊下・階段など2カ所からON/OFF。必ず2個セットで使用。1個単独では機能しない。
8●44路スイッチ
●4
4W15A
3カ所以上でON/OFF時に使用。必ず3路スイッチ2個と組み合わせて設置。
9●H位置表示灯内蔵スイッチ(ほたるスイッチ)
●H
JIS C 0303「位置表示灯を内蔵するものはHを傍記する」
OFF時に緑色に光りスイッチ位置を表示。暗い廊下・寝室に推奨。
10●L確認表示灯内蔵スイッチ(パイロットスイッチ)
●L
JIS C 0303「確認表示灯を内蔵するものはLを傍記する」
ON時に赤色に光り稼働中を表示。換気扇・床暖房など消し忘れ防止に有効。

💡 照明

No.図記号名称発注時のポイント
11○(白丸)白熱灯・LED照明(汎用一般形)天井付き一般照明の基本記号。器具の詳細は凡例・仕様書で確認。
12横長長方形蛍光灯(LED蛍光灯型も同記号)事務所・廊下・倉庫等で多用。近年はLEDへの切り替えが標準。
13○+DLダウンライト
DL
天井埋込型。個数が多いほど施工費増。図面での個数確認が重要。
14長方形+矢印誘導灯(非常口・避難方向表示)🔴 消防法施行令第26条で設置義務。廊下・階段・非常口に必ず設置。検査で必ずチェックされる。
15二重丸非常用照明(停電時自動点灯)🔴 建築基準法施行令第126条の4で設置義務。停電時30分以上点灯。誘導灯とは根拠法令が別。

⚙️ 盤・保護機器

⚠️ 混同厳禁:B/E/BEの違い
B=過電流遮断のみ E=漏電遮断のみ(過電流保護なし・特殊品) BE過電流+漏電の両方対応・実務の標準品 ←誤発注に注意

No.図記号名称発注時のポイント
16B
[B]
配線用遮断器(ブレーカー)
B=Breaker
過電流・短絡から回路を保護。漏電は遮断しない。各回路ごとに設置。容量(A数)要確認。
17BE
[BE]
漏電遮断器(過負荷保護付)
B=Breaker/E=Earth leakage
🔴 水回り・屋外回路に必須。過電流と漏電の両方を遮断する実務標準品。「E」単独(過電流保護なし)と混同しないこと。
18分電盤記号分電盤建物の電気の起点。容量(kVA)と回路数が見積もり金額に直結。必ず確認。
19接地記号接地
D種(旧称:第三種)100Ω以下=一般低圧機器
C種(旧称:特別第三種)10Ω以下=300V超低圧機器
感電防止の根幹。種別により工事規模が異なる。一般的な機器はD種が最も多く使われる。
20非常コンセント非常コンセント
消防法によるもの
🔴 消防法で設置義務。11階以上の建物に義務付け。消防隊が使用する専用コンセント。一般コンセントとは別管理。

📋 傍記クイックリファレンス(記号の右横の文字)

傍記由来・正式名称意味・用途
2・3口数(数字)2=2口、3=3口(1口は省略)
EEarth(接地極)接地専用の差込極(穴)がコンセント本体に設けられたタイプ
ETEarth Terminal(接地端子)ネジ式の接地端子付き。アース線を手作業で固定するタイプ
ELEarth Leakage(漏電)漏電遮断器内蔵コンセント。水回り・屋外の漏電対策手段の一つ
WPWeather Proof(防水)防水カバー付き屋外専用
LKLock(ロック)抜け止め形。回転ロック機構付き
HJIS規定なし
※「ほたる」は業界通称。コンセントの「H」はHospital(医用)を意味するため別物
スイッチがOFF時に緑色に光る位置表示灯内蔵(通称:ほたるスイッチ)
LJIS規定なし
※JIS C 0303では「確認表示灯を内蔵するもの」と定義。英語展開形の規定なし
スイッチがON時に赤色に光る確認表示灯内蔵(通称:パイロットスイッチ)

図記号出典:Panasonic 配線図記号一覧 /  国土交通省 公共建築設備工事標準図(電気設備工事編) /  JIS C 0303:2000

カテゴリ別「電気用図記号」一覧表

カテゴリ別「電気用図記号」一覧表

実務でよく目にする記号をカテゴリ別に整理しました。打ち合わせや図面確認の際の辞書としてご活用ください。

コンセント/スイッチ

コンセントとスイッチは図面上で最も頻繁に登場する記号です。記号本体の形は共通していても、傍記(横に添えられた小文字のアルファベット)が変わるだけで機器の仕様と価格が大きく変わります。「E」「WP」「LK」といった傍記を見落とさないことが、正確な見積確認の鍵です。

記号名称記号(略号)意味・用途工事費への影響
コンセント(1口)なし(数字省略)最も標準的な壁付コンセント。2Pプラグ差込口1口。基本単価の基準となる。
2口コンセント傍記「2」差込口が2口あるコンセント。住宅・オフィスの実務標準品。1口より若干高いが、口数に対してコスト効率は良い。
接地極付コンセントE(Earth)接地専用の差込極(穴)がコンセント本体に設けられており、対応プラグを挿すだけで接地接続できる。PCやサーバー、精密機器向け。接地工事が必要なため一般品より割高。E・ETの誤認に注意。
接地端子付コンセントET(Earth Terminal)アース線をネジ止めする端子付き。洗濯機・冷蔵庫など白物家電に対応。Eとは接続方式が異なる別物。同上。E・ETの誤認に注意。
抜け止め形コンセントLK(Lock)プラグを回転させてロックする構造。振動の多い設備周辺や重要機器に。特殊品のため一般品より単価高。
防雨形コンセントWP(Weather Proof)防水カバー付き。屋外・厨房・機械室など水が飛ぶ場所に。防水構造のため高価。設置箇所の防水処理費も別途かかる場合あり。
防爆形コンセントEX(EXplosion)爆発の危険がある場所向けの特殊構造。塗装室・危険物倉庫等。非常に高価。労働安全衛生法の要件確認も必要。
床付コンセントF(Floor)床面に埋め込んで設置。OAフロアのある事務室や会議室に。床の開口工事が伴い、設置費が割高になりやすい。
スイッチ(単極)●(黒丸のみ)1箇所から1つの照明をON/OFFする最もシンプルなスイッチ。最も安価な基本単価。
スイッチ(3路)●32箇所から同じ照明を制御できる。階段の上下、廊下の両端など。必ず2個セットで使用。配線が複雑になるため単極より工事費が上がる。
スイッチ(4路)●43箇所以上での制御を実現するため、3路スイッチ2個の間に挿入して使用。さらに複雑な配線が必要で工事費増。設置箇所数を必ず確認する。
確認表示灯付スイッチ(パイロット)●L
※JIS C 0303規定。英語展開形なし
スイッチON時にランプが点灯。換気扇など動作確認が必要な機器に。機能が追加された分、単体品より単価高。LとHを用途に応じて使い分ける。
位置表示灯付スイッチ(ほたる)●H
※JIS C 0303規定。「ほたる」は業界通称
スイッチOFF時にランプが点灯。暗い廊下や夜間でもスイッチ位置がわかる。同上。LとHを用途に応じて使い分ける。
遅延スイッチ●DOFF操作から一定時間後に電気が切れる。換気扇の余熱排気などに。機能品のため一般スイッチより高価。
コンセント種別「相対コスト比較」

接地(アース)/保護導体

接地は「安全上の要」であり、コスト的にも軽視されがちですが、適切な接地工事の省略は感電事故や設備トラブルに直結します。図面に接地記号があれば、その施工内容と接地抵抗値を業者に確認しましょう。

記号名称意味・用途工事費への影響
接地(一般)機器の金属筐体や回路を大地に接続することの総称。漏電時に電流を大地へ逃がし、感電を防止する。接地極の埋設・接地抵抗測定が必要。手を抜くと後工程でやり直しになる。
接地極地中に埋め込むアース棒・アース板のこと。良好な接地を得るためには土質や埋設深さが重要。土壌条件によって施工難易度が変わり、費用差が出る。
接地端子機器・盤に設けられたアース線接続用のネジ端子。図面上に描かれている場合、その機器への接地工事が必要。端子への接続費は比較的小額だが、接地極まで引く配線費は別途計上される。
等電位ボンディング導体異なる金属部分間の電位差をなくすための導線。浴室・手術室・サーバールームなど、特に安全性が求められる場所に使用。専門的な施工が必要でコスト増になりやすい。用途に応じた必要性を確認。

ブレーカー/遮断器/開閉器

遮断器の種類は、電気安全の要です。「配線用遮断器(NFB)」と「漏電遮断器(ELB)」は外見がよく似ていますが、機能と価格が異なります。見積書の明細に「NFB」と「ELB」が混在している場合、設置場所ごとに適切な種類が選ばれているかを確認することが重要です。

記号名称略称意味・用途工事費への影響
配線用遮断器MCB / NFB / MCCB過電流やショートが発生した際に回路を自動遮断。「ブレーカー」の一般的なイメージはこれ。NFBはNo Fuse Breaker(ノーヒューズブレーカー)の略。分電盤の基本構成要素。回路数に応じて必要数が増え、盤全体の費用に直結する。
漏電遮断器(過負荷保護付)ELB / ELCB
図記号:[BE]
漏電(地絡)を検知して回路を遮断する機能に、過電流遮断機能も加えた実務標準品。水回り・屋外回路・工場設備に必須。図面上の記号は「BE」。配線用遮断器より高価。必要箇所への確実な設置は安全管理上不可欠。
気中遮断器ACBAir Circuit Breakerの略。低圧大電流回路の遮断・開閉に用いる。主に受変電設備や大型分電盤の主幹に採用される。大型・高価格品。主幹に設置されるため交換工事は大規模になりやすい。
電磁接触器(マグネットスイッチ)MC電磁石の力で接点を開閉するスイッチ。モーターや大型設備の自動起動・停止制御に広く使用。モーター制御盤に必須の部品。サイズと制御電流容量によって価格が変わる。
開閉器SW回路を手動で開閉する器具の総称。ナイフスイッチや箱型開閉器など。比較的シンプルな機器だが、設置場所の環境仕様(防水・防爆等)で価格が変わる。

盤・計器(分電盤/制御盤)

盤類はそれ自体が高価なうえ、収めるブレーカーの数や計器の種類によって費用が大きく変動します。図面上の盤記号の横に書かれた「回路数」や「容量」の数値が見積金額の根拠になるため、必ず突合してください。

記号名称意味・用途工事費への影響
分電盤建物内の各回路へ電気を分配する盤。ブレーカーが内蔵され、電気の「交差点」として機能する。盤のサイズ・回路数・主幹容量(アンペア)で価格が大きく変動する。増設時は空き回路数の確認が必須。
配電盤電力会社から送られた高圧電力を低圧に変換し、各分電盤へ供給する大型の盤。非常に高価な設備。大規模改修でなければ交換対象にはなりにくいが、容量確認は重要。
制御盤機械設備や生産ラインの自動運転を制御するための盤。リレー・シーケンサ(PLC)・インバータ等を収納。カスタム仕様になることが多く、標準品より高価になりやすい。仕様書の内容確認が重要。
電力量計消費電力量を計測するメーター。単位はWh(ワット時)。電力会社からの請求の根拠となる。主幹の電力量計は電力会社所有・管理が一般的で、発注側の負担は通常発生しない。子メーターは別途費用が必要。
変流器Current Transformer(CT)の略。大電流を計器で測定可能な小電流に変換する装置。電流計や電力量計と組み合わせて使用。計測システム構築のための付属機器。電流値の範囲に応じた選定が必要。

照明・防災設備

照明と防災設備は、記号の見た目が似ていても設置義務の根拠法令が異なります。特に「非常用照明」と「誘導灯」を混同している資料が多く見受けられますが、両者は根拠法令・管轄・点検制度がすべて別物です。発注時に誤認したまま進めると、法定点検の担当部署が変わったり、検査対応で後々問題が生じたりするため、正確に覚えておきましょう。

記号名称意味・用途根拠法令工事費への影響
照明器具(一般)天井・壁面に取り付ける一般照明。白熱灯・蛍光灯・LED等。器具単価+取付費。高所作業が必要な場合は作業車費用が加算。
ダウンライト天井に埋め込む小型照明。開口工事が伴う。天井開口工事費が別途発生する点に注意。
非常用照明器具停電時に内蔵バッテリーで自動点灯し、避難経路に最低限の「明るさ」を確保する。建築基準法施行令第126条の4専用器具で高価。建築基準法に基づく特定建築物定期報告の対象となる点検が必要。
誘導灯緑地に白のピクトグラムで避難口・避難ルートの「方向」を明示する。消防法施行令第26条専門器具で高価。消防用設備等点検が義務付けられており、点検費も継続的に発生する。
熱感知器周囲の温度上昇を検知して火災を知らせる。自動火災報知設備の一部。消防法設置基準・間隔が法令で定められており、勝手に削減できない。
煙感知器煙を検知して火災を知らせる。寝室や廊下など煙の充満が早い場所に有効。消防法同上。熱感知器と煙感知器は設置場所の区分が決まっている。
非常用照明 vs 誘導灯

重要ポイント:非常用照明と誘導灯はどちらも防災設備ですが、根拠法令が異なります。非常用照明は建築基準法(施行令第126条の4)、誘導灯は消防法(施行令第26条)が根拠です。点検制度も異なるため(建築基準法→特定建築物定期報告、消防法→消防用設備等点検)、設備管理上は別々に管理する必要があります。

配線・その他

配線の種類は「見えないコスト」に直結します。同じルートを配線するにも、天井隠ぺい・露出・地中埋設では施工手間が大きく異なります。改修工事では既存の配線方式を確認したうえで、追加工事の方式を決定することが費用の節減につながります。

配線方式「コスト比較」
記号名称線種(図面上の表現)意味・用途工事費への影響
天井隠ぺい配線実線天井裏に電線を隠して配線する最も一般的な方式。標準的な工法。露出よりやや手間がかかるが仕上がりがきれい。
床隠ぺい配線破線床下やフリーアクセスフロア内に配線する方式。天井配線より手間がかかる傾向。OAフロアの有無で施工内容が変わる。
露出配線一点鎖線壁・天井の表面にモールやケーブルラックで配線する方式。改修工事でよく使われる。隠ぺい配線より安価だが美観は劣る。
地中埋設配線二点鎖線屋外の地中にケーブルを埋設する方式。掘削工事が伴うため最もコストが高くなりやすい。
立上り丸の中に上向き矢印配線が下の階または床から上方向へつながることを示す。縦方向の配線は横方向より施工ルートの確保が難しく費用増になりやすい。
引下げ丸の中に下向き矢印配線が上の階または天井から下方向へつながることを示す。同上。
ジョイントボックス丸印(J)電線同士を接続するための箱。後日点検が必要なため、アクセスできる位置に設置が原則。ボックス本体は安価だが、設置位置を工夫しないと後の点検費が嵩む。
プルボックス四角記号(PB)多数の電線が集まる中継地点に設置する大型の箱。配管工事の引き込み作業を容易にする。規模が大きくなるほどコストアップ。大型施設の配線設計には不可欠。
発注側の"事故りポイント"と対処法

発注側の”事故りポイント”と対処法

電気用図記号の知識は、予期せぬ追加費用や工事のやり直しを防ぐための「事前防衛」として機能します。現場では次のようなトラブルが実際に発生しており、いずれも「発注時の確認不足」が原因です。

「分かったつもりで発注」が最も危険なケース

 3路・4路スイッチ「配線イメージ図」

ケース①:コンセントの接地仕様の見落とし

図面上の「E」付きコンセントを一般品と同じと思い込んで発注したところ、納品後にサーバーの3Pプラグが差し込めないことが発覚。追加でコンセント交換工事を発注することになり、工期と費用が余計にかかってしまった、というケースは珍しくありません。PCやサーバーが設置される場所の図面では、必ず「E」「ET」の傍記を確認してください。

ケース②:分電盤の容量不足に気づかず追加工事が大規模化

コンセントの増設を依頼したところ、既存の分電盤に空き回路がなく、分電盤ごと交換する大規模工事に発展したケースです。コンセントの増設や電力使用量が増える工事では、事前に「既存分電盤の空き回路数」と「主幹ブレーカーの容量(アンペア数)」を業者に確認させるよう指示するひと手間が、後の予算超過を防ぎます。

ケース③:非常用照明と誘導灯の管理区分を混同

非常用照明の点検を消防設備点検と一括して依頼していたが、実は非常用照明は建築基準法に基づく「特定建築物定期調査」の管轄であることが判明。点検記録の管理が適切に行われておらず、行政報告の際に問題になった、というケースもあります。両者の法的区分を正確に理解しておくことは、設備管理者としての責任を果たすうえでも重要です。

見積依頼に最低限必要な情報(コピペOKのテンプレート)

業者との認識のズレを最小化し、精度の高い見積もりを取得するために、以下のテンプレートをそのままコピーしてお使いください。

件名:【見積依頼】○○工事に関する電気設備図面の確認

○○株式会社 ○○様

いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。

添付の電気設備図面に関し、下記内容の電気工事を検討しております。
つきましては、概算見積もりをご提示いただけますでしょうか。

■図面情報
・図面名/番号:[例:E-101 電灯設備配線図(2階平面)]
・図面作成日:[例:2025年○月○日版(最新)/古い図面しかなく現地調査をお願いしたい]

■工事の概要
・工事範囲:[例:添付図面の赤枠エリア(2階 東側執務室)]
・希望工事内容:
  - [例1:接地極付コンセント(E付き)を5箇所増設したい]
  - [例2:スイッチ記号の横に「3」とあるが意味がわからないため解説いただきたい]
  - [例3:既存の蛍光灯照明をLEDに更新した場合の概算費用も知りたい]

■現場条件
・施設の稼働状況:[例:平日9〜18時は生産稼働中のため、工事は土日または平日夜間希望]
・停電可否:[例:電源を一時的に遮断する作業が必要な場合は事前に2週間以上の告知が必要]
・既設情報:[例:既存図面を添付しているが古い可能性があるため、着手前の現地調査をお願いしたい]
・天井高・作業環境:[例:天井高6m。高所作業車の搬入が必要な場合は別途お知らせください]

■スケジュール
・見積回答期限:[例:○月○日(○)まで]
・工事希望時期:[例:○月中旬以降]

ご不明な点がございましたら、いつでもご連絡ください。
何卒よろしくお願いいたします。

---
株式会社△△
部署名:□□部
担当:△△ △△
電話:XXX-XXXX-XXXX
メール:xxxx@example.com
---

このテンプレートのポイントは「停電可否」と「施設稼働状況」を明記している点です。これを伝えないと、業者が通常の昼間工事を前提に見積もりを作成してしまい、夜間・休日割増費用が後から加算されるトラブルが起きます。また「現地調査の要否」を最初に確認しておくことで、現地調査費の別途請求リスクも事前に回避できます。

根拠(規格)への当たり方:JIS C 0303とJIS C 0617の参照方法

根拠(規格)への当たり方:JIS C 0303とJIS C 0617の参照方法

この記事で解説した図記号には、明確なJIS規格(日本産業規格)の根拠があります。業者との打ち合わせで「一次情報に当たりたい」と思ったときのために、二つの主要規格を整理しておきます。

JIS C 0303:2000「構内電気設備の配線用図記号」

発注担当者が最も関係するのはこちらの規格です。建物の電気設備図面(配線図・平面図)に描かれるコンセント、スイッチ、照明器具、分電盤、配線方式などの記号が体系的に定められています。国土交通省の「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)」もこの規格を準拠の基本としており、官公庁施設から一般的な民間ビル・工場まで幅広く使われています。日本産業標準調査会(JISC)のウェブサイトから規格番号「C0303」で検索し、内容を確認できます(JIS検索)。

JIS C 0617「電気用図記号」(IEC 60617準拠)

こちらは電気回路図やシーケンス図(制御盤の内部配線図など)で使われる、より広範な規格です。抵抗・コンデンサ・半導体・変圧器・遮断器の接点記号といった電子・電気部品の記号が体系的に収録されており、IEC(国際電気標準会議)の規格60617に整合した国内規格でもあります。三菱電機FA の参考資料(JIS C 0617抜粋PDF)や、ニューコム株式会社の記号リスト(JIS C 0617準拠 シンボル一覧)は、実務的な参照先として有用です。

発注担当者が日常的に関わる建物の配線図ではJIS C 0303が基本です。制御盤の内部図面や電気回路図を確認する際にはJIS C 0617も参照する、という使い分けを覚えておくと整理されます。なお、参考文献として最もわかりやすい一次情報のひとつが国土交通省「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)」であり、図記号の具体的な描き方・傍記ルールが実際の業務図面と対応した形で掲載されています。

実務TIP:図面レビュー時の"記号チェック"手順

実務TIP:図面レビュー時の”記号チェック”手順

業者から提出された図面や見積書を発注担当者がレビューする際の、具体的なチェック手順を4ステップで示します。電気の専門知識がなくても、この手順を踏めば「重大な見落とし」を防ぐことができます。

図面レビュー「4ステップ フローチャート」

Step 1:まず「凡例」と「特記仕様書」を読む

図面の右下や別紙に記載されている「凡例(LEGEND)」と「特記仕様書」には、その図面で使われている記号の定義と、標準仕様から外れた特別指示が書かれています。ここを先に読むことで、図面全体のルールを把握でき、記号の読み違いを防げます。

Step 2:記号の「数量」を数えて見積書と突合する

図面上のコンセント・照明器具・スイッチ等の記号を種類ごとに数え、見積書の数量と一致しているかをチェックします。これは電気の知識がなくてもできる、最も基本的かつ有効な確認です。数量の拾い漏れや重複計上を、このステップで多く発見できます。

Step 3:傍記(小文字のアルファベット)を見逃さない

「E」「ET」「WP」「LK」「3」「4」といった記号本体の横に添えられた小文字は、機器の仕様と価格を大きく左右します。傍記の有無・種類を確認せずに発注すると、納品後に仕様が合わないという事態につながります。特に「E」(接地極)と「WP」(防水)の見落としに注意してください。

Step 4:不明な記号は必ず質問する

理解できない記号は、「なんとなくわかる気がする」で放置するのが最も危険です。「この記号は何を意味しますか?」「なぜこの場所にこの仕様が必要なのですか?」という質問は、認識のズレを防ぐだけでなく、業者が仕様の妥当性を再確認するきっかけにもなります。専門家でない担当者が率直に質問することは、むしろ的確な発注につながる有益な行為です。

電気図面の読み方をさらに深めたい方は、「電気工事の図面読み方ガイド」もあわせてご参照ください。

よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

Q1. JIS C 0303とJIS C 0617は何が違うのですか?

A1. 大まかに言うと、JIS C 0303は「建物の中の電気設備をどこに設置するか示す図(配線図・平面図)」で使う記号を定めたもの、JIS C 0617は「電気・電子回路の動作や接続を示す図(回路図・シーケンス図)」で使う記号を定めたものです。発注担当者が普段目にする建物の電気設備図面はJIS C 0303が基本となります。ただし、制御盤の内部回路図はJIS C 0617が適用されるため、両方の存在を知っておくと混乱しません。

Q2. 「E」付きコンセントと「ET」付きコンセントは何が違いますか?

A2. どちらもアース(接地)のための仕様ですが、接続方法が異なります。「E」(接地極付)はコンセント本体に3本目の電極(アース極)が付いており、3Pプラグをそのまま差し込むだけでアース接続が完了します。PCやサーバーなどの情報機器に多く使われます。「ET」(接地端子付)はコンセントの脇にアース線を接続するためのネジ端子が付いており、機器側から別途アース線を引き出してネジ止めします。洗濯機・冷蔵庫・電子レンジなどの白物家電に多い形式です。

Q3. スイッチ記号の横の「3」や「4」はどういう意味ですか?

A3. それぞれ「3路スイッチ」「4路スイッチ」を意味します。3路スイッチは2か所から同じ照明をON/OFFできる仕組みで、階段の上下や廊下の両端によく使われます。4路スイッチは、3路スイッチ2個の間に挿入することで、3か所以上からの操作を可能にします。通常の単極スイッチよりも配線が複雑になるため工事費が上がり、見積書にその分が計上されているかを確認することが重要です。

Q4. 非常用照明と誘導灯は同じ消防法で定められているものではないのですか?

A4. 混同されやすいですが、根拠法令が異なります。非常用照明器具は「建築基準法施行令第126条の4」に基づき設置が義務付けられており、停電時に空間全体を照らして避難経路に最低限の明るさを確保する目的で設置されます。一方、誘導灯は「消防法施行令第26条」に基づくもので、緑色のピクトグラムで避難口や避難方向を「明示」する目的があります。どちらも防災設備ですが点検制度が異なるため(非常用照明→特定建築物定期報告、誘導灯→消防用設備等点検)、設備管理上は区別して管理する必要があります。

Q5. 図面に「φ2.0」「φ1.6」とあるのはどういう意味ですか?

A5. 電線の太さ(直径)を示しています。「φ」(ファイ:ギリシャ文字のΦ)は直径を意味する記号で、「φ2.0」ならば直径2.0mmの電線を、「φ1.6」ならば直径1.6mmの電線を使用することを意味します。電線は太いほど流せる電流の容量が大きくなりますが、材料コストも上がります。電線の太さは電気設備技術基準(電技)によって負荷電流に応じた最低基準が定められているため、設計値を変更することは原則できません。

まとめ

まとめ

この記事では、発注担当者の視点から電気用図記号の意味・工事費への影響・実務での活用方法を体系的に解説しました。

記号を完全に暗記する必要はありません。大切なのは、「傍記の小文字アルファベットが仕様の分岐点になる」「非常用照明は建築基準法、誘導灯は消防法という法令の違いが管理区分に直結する」「不明な記号を放置せず質問することが最大の防衛策」という三点を実務の習慣として持つことです。

この記事をブックマークし、次に図面や見積書を受け取った際の辞書としてご活用ください。さらに電気図面を深く理解したい方は、電気図面の見方を徹底解説した記事や、設備の省エネ・更新検討に関連するトップランナー変圧器の解説記事も参考になります。電気設備工事の発注から管理まで、スリーセンス株式会社は発注側の皆様をサポートします。お気軽にご相談ください。

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参考文献・引用規格

  • 日本産業規格「JIS C 0303:2000 構内電気設備の配線用図記号」kikakurui.com
  • 日本産業標準調査会(JISC)「JIS規格検索」jisc.go.jp
  • 三菱電機FA「参考資料 電気用図記号(JIS C 0617)抜粋」mitsubishielectric.co.jp
  • ニューコム株式会社「JIS C 0617準拠 電気シンボル一覧」newcom07.jp
  • 国土交通省「公共建築設備工事標準図(電気設備工事編)」mlit.go.jp
  • 建築基準法施行令第126条の4(非常用照明の設置義務)
  • 消防法施行令第26条(誘導灯の設置義務)